気持ちを込めてもういちど
「名前、好き。」
「ありがとう。私も。」
雑誌を読みながら抑揚のない声でそう呟くのは僕の恋人、苗字名前。
もう1度言っておくけど僕の"恋人"。
僕に対して声色、表情も変えず好きだと言う。
それが恋人に対する態度なの?
甘い声で言ってほしいとか、色っぽい声で言ってほしいわけじゃない。
ただ、もう少し気持ちをこめてほしいだけ。
「ねぇ、もう少し気持ち込められない?」
僕の声に反応した名前は、読んでいた雑誌を閉じ渋々顔を上げた。
途中、舌打ちが聞こえたけど聞こえなかったことにしよう。
「好き」
棒読みでそう言った名前の目は死んでいる。
「なにそれさっきより酷いんじゃない?」
「透は私の先生なの?父親?」
「もう少し気持ちを込めてって言ってるだけ。それにいつももう少し目キラキラしてるよね?」
「うるさい犯罪者。」
名前はストレートに物事を言う性格だ。
こういった発言を他人にもしているのかと思うと心配になる。
「僕以外にもそういう感じなの?」
「透だから言ってるんだけど。もう1回言っていい?透は私のお父さんなの?」
「僕は名前の恋人だよ。」
「私も透の恋人だよ。」
オウム返しとはまさにこれ。
名前の態度が変わらないなら僕が行動に出るしかない。
こうすれば名前も少しは純粋で可愛らしい態度を取るはずだ。
「名前」
「さっきからなに...。」
嫌々顔をあげた名前の目を見て口を開く
「愛してる」
どう?これで少しはおとなしくなるでしょ?
ところが予想外なことに名前はみるみる顔を歪ませていく。
まるで家の中で某虫を見た時のような表情だ。
「なにその顔。」
「突然気持ち悪いこと言わないで...。」
「へえ...。」
ここまでしたのに効果ないってどういうこと?
ここまでしたのにあの態度。
今すぐにでもテレビにぶち込んでやりたい...!
彼女の心を動かすためにテレビを使うのは許されますか。
はい
いいえ