お願いです。消しゴムを買わせてください。


「あ、」

ジュネスで買い物をしようと思ったけど、足立さんがいたから家に帰ろう。
足立さんが嫌いなんじゃない。むしろ恋心を抱いている。だからこそ近寄れないんだ。
ここ数日、寄ろうとしては家に帰る。を繰り返しているから買い物ができない...。

「名前ちゃん発見伝!」
「ひっ...!」

聞き覚えのある声に、聞き覚えのあるあの口癖。
振り返ると言わずもがな足立さんの姿があった。

「なんかひさしぶりじゃない?最近ジュネス来てなかったでしょ!」
「あ、あー...そうですね....。節約?してて」

毎日ジュネスの入口までは行ってるんです。入口までは。
知らないでしょうけど足立さん発見伝してますから。

「高校生だもんねー。買いたくても買えないか!」

ごめんなさい。節約なんて嘘なんです。
毎日ジュネスに行って買おうとしてるのは消しゴムなんです...!
誰のせいで買えないと思ってるんですか!?と逆ギレしたいところだけど抑えよう。

「僕が買ってあげようか?」

なんだか恥ずかしくなってきた...勝手に片思いをしている相手に買ってあげようか?なんて言われて嬉しくない女はいないはず...はず。
だけど消しゴムだ。私が欲しいのは消しゴムなんだ...!
もう1度言いますけど、誰のせいで買えないでいると思ってるんですか?

「なーんてね。節約してでも買いたいものあるんでしょ?きっと。」

消しゴムだ。
きっと足立さんの脳内じゃかわいいワンピースだとかかわいいアクセサリーなんだろうけど...。

「ま、頑張りなよ。名前ちゃん節約上手そうだし。」
「...ありがとうございます。」

それじゃ、そろそろ仕事戻らなきゃ。と足立さんは警察署の方向へと歩いて行った。
明日こそ買えるといいな...。消しゴム...。



次の日の放課後、今日こそはとジュネスへ向かった。
警察としての仕事をしていてほしい。サボってもいいからジュネスだけはやめてほしい。
姿を見られるのは嬉しいけどジュネスにだけはいないでほしい。

「げっ...!」

落ち着いて私、ここは公共施設なの。女の子なんだからそんなこと言わないの。
と言いたいところだけどこればっかりは無理だ。

「足立さん発見伝...。」

今日もまっすぐ家にかえろう。




そろそろ消しゴムが限界です。
新品の消しゴムの角を使いたくないあの気持ちになりたいです。