上映中はお静かに
「透、映画見に行かない?」
名前がザ・純愛と言えそうな映画の予告動画を見せてきた。
超人気漫画の実写化!なんて...はいはい最近の流行ね。
正直僕は興味がない。何回でも言おう。興味がない。
「あ、今心底嫌そうな顔したね?でも拒否権ないよ。もうチケット買ってある。」
なんて話が早い彼女なんだ。
しかし、興味がない映画をタダで見られるというのなら僕としては問題ない。
「映画代は私払うから、ご飯奢って!」
「了解。」
付き合って数年。
僕としてはそろそろ決めるところは決めたいものだ。
彼女がどう思っているかはわからないけど。
約束の日当日。
名前に引っ張られながら映画館へとやってきた。
休日なのに客がまばら。本当に人気なの?
タダで映画を見られるとはいえ、興味のない物のために2時間以上座り続けるのは億劫だ。
目の前のスクリーンには、興味のない女優と興味のない俳優が恋愛ごっこ。
この映画の何がおもしろいのか僕には理解できない。
ちらりと名前を横目で見れば、興味津々と言った表情でスクリーンを見つめていた。
正直こんなストーリーいくらでも存在するだろう。
僕にはどれも同じにしか思えないけど。
物語も佳境に入ってきたらしい。
どうせこのまま男が女に告白して終わるやつだ。
...あ、これやったら怒られるかな。まぁいいか。
名前が座る左側のシートに体を寄せ口を開く
「ねぇ名前、」
「今いいところだから静かにしてて」
確かにいいところだ。男が愛の告白をしようとしてる。
僕はこのタイミングを待っていた。
さっきよりも名前側へ体を寄せ耳元へ口を寄せた。
スクリーンの中の男がセリフを言うタイミングで僕も口を開く。
「結婚しよっか。」
すると、バッと効果音が付きそうな勢いで名前が僕の顔を見た。
暗くてよく見えないけどスクリーンに照らされている部分が赤いような赤くないような。
「映画、見なくていいの?」
「み、みる....」
明るくなったらどんな顔してるだろう。
それだけを楽しみにもう少しだけこの恋愛ごっこに付き合うとしよう。
愛の告白でも
上映中は
お静かに