こんなに好きになるなんて
「おつかれ。」
「うわ、あ、ありがとうございます。」
夕方になると彼女はジュネスのフードコートにやってくる。
それを知ってあらかじめ彼女が好きなジュースを買っておく。
話に行く理由を作るために。
「ジュースなんて大丈夫ですよ?毎回貰ってる気がして...。」
「頑張る学生に僕からのプレゼント。ってことにしといて!」
「ありがとうございます。」
彼女は小さく微笑み、おいしそうにジュースを飲み始めた。
「足立さんにこの味好きって言ったのいつでしたっけ?」
「奇遇だね、僕も同じこと考えてた。」
「本当ですか?たしか...私がここで勉強してて足立さんが声かけてきたんでしたっけ?」
「事件の聞き込みって言ってよ。それじゃ僕がナンパしたみたいじゃない...。」
「勉強中悪いんだけど事件のことでちょーっとだけお話聞かせてもらってもいい?って言ってました。」
僕と彼女が接点を持ったのは、僕が例の事件の件で彼女に聞き込みをしたのが始まりだ。
「名前ちゃんあのとき、アテになること答えられないと思いますけど何でもお話ししますから、この問題教えてもらってもいいですか!って言ったの覚えてる?」
「あー、はい...覚えてます。お恥ずかしい...。」
あまりにもわからないから教えてほしい。と言われ最後まで教えたことを覚えている。
それ以来彼女は勉強を教えてくれ。と僕を頼るようになった。
「あ、それで私が勉強してるときに毎回これ飲んでるよね。この味好きなの?って足立さんが聞いてきたんですよ。解決しました!」
そうだった。彼女の好きな味を知った経緯について話してたんだっけ。
君の好きな味を知る人間はほかにいるのだろうか。
もし僕が、あの事件の犯人なんだ。と語ったら君は何を思う?
泣き出すだろうか、それとも警察に突き出すとでも言うのかな。
どっちにしろ、泣き喚くなら黙らせる。
警察に突き出すと言うならば、あの世界に突き落とせばいい。
もう1人の自分はそう言うだろう。
だけど、まだ早い。
「そろそろ帰らなきゃ...。足立さん、お仕事頑張ってくださいね。あと、また勉強教えてください。頼りにしてますから!」
そう言い彼女はフードコートから去っていった。
最初はただのガキとしか思ってなかった。勉強教えてくれと言われた時も面倒だった。
それが今は彼女の好きなあの味を見かけるだけで彼女を思い出すようになっている。
ただのガキだと思い続けていたかった。