それ、揚げ足取りっていうの知ってる?
仕事中、ふと名前に会いたくなりメッセージを送った。
『今日帰り早いから夜会えない?どこでもいいよ。』
そのうち返事が来るだろうと気長に待っているつもりだった。
しかし、仕事の合間にチェックしても一向に返事が来ない。
名前は高校生だから僕と時間のサイクルが違うことぐらいわかっている。
だとしても、高校生にも休み時間はある。
名前はインターネットに時間を使うイマドキの女子高生なんだ。
使い始めたら取り憑かれたように手放さず、呪われたように液晶をタップし続ける。
そんなスマホ依存症の彼女が休み時間にスマートフォンを見ないとは思えない。
それとも既読無視かと思いアプリを開いてみても既読はついていない。
...そもそも読む気がないということか。
『返事遅れてごめんなさい!会えますよー。学校終わったら足立さんのお家まで行けばいいですか?』
会えるとなれば話が早い。残りの仕事もササッと終わらせて逃げるように帰ろう。
宣言通り仕事を終わらせ帰宅した。
時計を見れば18時。そろそろ名前が来る頃だろうと考えていたら予想通りインターホンが鳴った。
「キャベツ買ってたら遅くなっちゃいました...。」
ドアを開けると、ジュネスの袋に入ったキャベツを差し出しながらそう話す名前の姿。
「おかえり。」
袋を受け取るより先に名前を抱き寄せ額にキスを落とす。
頬を赤く染めながら目を泳がせ、ここ外!とリビングまで逃げていく名前が愛おしい。
「今日返信遅くなかった?別にどうでもいいけど。」
「返信...?あ、あー、ごめんなさい。」
「謝らなくてもいいんだけど、珍しいなーって思っただけ。」
「珍しく学校で触らなくて...。でも、」
名前の言葉が途切れ、彼女の方向へと視線を移すと自身のスマートフォンを操作していた。
僕と話すより大切なことがあるのだろうか。
僕との話を中断してでも返信したい相手がいるということか。
そう考えてしまう自分の悪い部分に舌打ちをし感情を抑え込んだ。
「私、足立さんんから返信来てませんよ?」
名前が見せてきたのは昼間にやり取りをしていた画面だった。
最後のやり取りは名前が僕に送った家に行くかどうかというメッセージ。
「せめて読んでほしかったなー。すぐに返してほしかったなー。」
皮肉交じりに名前がそう言った。
少し口元が笑っているからわざとそう言っているんだろう。
そんな名前の姿に腹が立ち、自分のスマートフォンに名前とのやり取りを表示した。
『 』
そう名前へ送信し、投げ捨てるようにスマートフォンを手放した。
元エリートの僕が教えてあげるけど
そういうの、 っていうんだよ。