サンタクロースは突然に


クリスマスって25日だっけ?仕事で会えそうにないんだよねー。

そう足立さんに言われたのは、クリスマスの1週間ほど前のことだっただろうか。
今日は12月25日。つまりクリスマス当日だ。
八十稲羽にいてもやることがない。だから沖奈へと来てみたけれど、まわりはクリスマスムードのカップルばかり。

「来なきゃよかった...。」

そうは言っても八十稲羽に帰るための電車は1時間後。
時間まで適当にお店でも見て回ろうか...。


駅前を歩き、商ケースを眺めては次のお店へ歩く。を繰り返していたとき、とあるマネキンが巻いていたマフラーに目がいった。
赤と黒のチェック模様。なんだろう。どこかの誰かを思い出した。
しかし、値段を見てみればとてもじゃないけど学生が今すぐに手を出せる値段ではなかった。
もし他のお店を見て回っても諦めがつかなかったら考えてみよう。そう思っていた。


「え、ない。」

他のお店を少し見て帰ってきただけだ。10分も経っていないはず。
買われるとかある?まぁ...買うのは人の勝手だしあの時買わなかった私が悪いから...。
恋人にも会えず、欲しい物も買えないクリスマスとかそんな最悪な日があっていいんですか?
...マフラーは私が悪いから置いといて、せめて足立さんには会いたかった。

「帰ろう...。」

電車の時間にはまだ早いけど、駅にいれば他のことを考えずに済むと思ったから。
深くため息をつき駅へと歩き出した。
今までにこんな最悪なクリスマスがあっただろうか。

ない。

こんなに最悪なクリスマスは人生で初めてだ。

「名前!!!」

もう少しで沖奈駅の階段だというタイミングで背後からとても聞き覚えのある声がした。
急いで振り返ればやっぱりそう。足立さん。
なぜか息を切らし、どこか疲れたような素振りなのはなぜだろうか。

「...仕事って言ってませんでした?」
「ここで仕事なんだって...でも、名前見かけたからこれだけは渡したくて...。」

あー、疲れた...。と手元の紙袋を差し出しながら、今年1番の全力疾走だったんだから!と足立さんはそう言っている。
それにしてもこの紙袋の名前どこかで...。

「え、これ!!」
「さっきあそこで見てたでしょ?」
「見てました...。買える気がしなくて...。」
「どーせ柄見て僕のこと考えてたんでしょ?」

いつもそうだ。足立さんにはすぐバレる。

「赤と黒を見て足立さん以外に何を思い浮かべればいいんですか?」
「...あーもう、すぐそういうこと言うんだから!とりあえず、仕事戻るから!」
「クリスマスプレゼントありがとうございます。あだちサンタさん。」
「き、気をつけてね!それじゃ!」

少し頬を赤く染めて足立さんは仕事へと戻っていった。
頬が赤かったのは寒さのせいか、それとも...。
あとで聞いてみよう。



このマフラーを巻いていたら、
足立さんと一緒にいる気分になれるかも。
ありがとうブラックサンタクロースさん。


Mary Christmas.