まずは言うことあるでしょ。そうじゃな...あーもうそれでいいよ!
冬休みなのをいいことに名前が僕の部屋に泊まりに来ていた。
年末の番組を頻繁に変えつつテレビに見入っている。
...どれか1つに絞ればいいのに。
「足立さん!」
そして今日は元旦。ついさっき大晦日から切り替わったばっかりだけど。
外から新年を祝う花火の音が聞こえてくる。
それなのに彼女は新年の挨拶より先に僕へ両手を向けている。
「何か忘れてない?」
「それはあとでです。」
「...あのねぇ、名前の言いたいことはわかるけど、そういうのって身内から貰うんじゃないの?」
「言わなくてもわかってくれる足立さんが好きです。それに、足立さんも身内みたいなものですよ?」
そうじゃないんだよなぁ...。嬉しいけど。
つまり彼女は今、僕にお年玉を求めているということになる。
あげることが嫌なわけじゃない。
でもこれじゃ僕が 名前をお金で釣ったみたいじゃない?
「わかってるならください。」
「いーやーだ。」
「くーだーさーいー。」
これはこれで女子高生に金を巻き上げられる成人男性みたいで嫌だし...。
「わかった。わかったから名前落ち着いて?」
「くれるんですか!?」
この子お金に欲あったっけ...?と思うくらいに今の名前は目が輝いている。
僕をお金としか見ていないようなそういう目。
「はい。これ。」
財布から取り出したのは500円玉。予想通り彼女は眉間に皺を寄せた。
皺を寄せたというか僕を睨んでいる。のほうが表現として合っているのかもしれないけど。
「まぁまぁそんな顔しないでよ。僕がただ渡すと思った?」
見せていた500円玉を握り彼女におまじないをかけさせる。
「せめて1000円になってください...。どうか...どうか...。」
せめて札に変わってくれと言うように、彼女は弱々しく手と手を合わせて願っていた。
焦らすようにゆっくりと手を開くと彼女の表情が一変しまた眉間に皺を寄せた。
「はい残念。名前の願いは届きませんでしたー。」
手の上にあるはずの500円玉は消え、彼女の表情は酷く曇っている。
それもそうだ、貰えるはずの物が消えてしまったのだから。
「ひどい。」
「え、まだ誰もこれで終わりって言ってないじゃない?」
でた、名前の何言ってるんだこいつ。って表情。
あーあー、そんなに睨んじゃって落ち着いてよもー。
「ポケット3回叩いてみて。」
僕の言葉通り名前がパジャマのポケットを3回叩く。すると目を見開き、また表情が変わり始めた。
お、効果は抜群って感じ?
「え...。」
「なにか見つけた?」
「...見つけた。」
恐る恐るポケットに手を入れる彼女が可愛らしい。
ポケットの中で何かを見つけたのか、素早く手を引き抜いた。
「わ、...えっ、え!?」
「欲しかったんでしょ?」
彼女の手には1000円札が3枚。
どういう感情からなのかブルブルを震えている彼女を見て、笑いを堪えるだけで大変だ。
「足立さん大好き!!!」
「痛っ!」
名前が突然抱き着いてくるから2人でその場に倒れこんでしまった。
それなのに名前は1000円札を見つめながらニヤニヤし続けている。
「はいはい。ありがとう。で、何か忘れてない?今日何月何日だと思ってるの?」
「足立さん大好き。」
そんなところが彼女らしいんだろうけど。