場違いなクリスマス


「シャだちさん。季節はもうクリスマスですよ。」
「だから?」
「ここにもクリスマスツリーがほしいなー。って思ったんです。」

名前がバカなのは知ってる。
だとしてもここにクリスマスツリーなんて場違いすぎる。そもそも僕はここにそんな物必要ない。

「いらない。向こうの僕と楽しくやればいいじゃない?」
「え、いいんですか?」
「は?」
「あだちさんとはクリスマスの思い出作るのに、シャだちさんとは作らないんですよ?」

いつから人を煽るのがうまくなったんだこの子は。

「まぁ、シャだちさんがしたくないって言うなら無理にやることないと思うので私は失礼しますけど?つまり、あだちさんとはクリスマスの思い出あるけどシャだちさんとの思い出はないので足立さんと口喧嘩しても、僕は名前とクリスマスやった!って言われたらもう何も言い返せませんね。ざんねーん!」

煽る。というよりこれは、人を怒らせる最速の方法だ。
何がざんねーん!なの。残念なのは君の頭でしょ。

「今、残念なのは私の頭だとか考えました?」
「さぁ?」
「あやしい...。」
「作りたいなら作ればいいじゃない。クリスマスツリー。」
「え、え...?は、つ、作ります!!」

作れば?とは言ってみたけど、実際この場所にツリーを作れるような材料なんてない。
そこはこの子の発想力に任せてしまえばいい。
...どうなるかは知らないけど。



「シャだちさん...。私、無理な気がしてきました。」

それもそうだ。ここを散々歩き回ってもクリスマスツリーを作れそうな材料なんて落ちていない。
元々ここでクリスマスがどうのこうのなんて無理があったの。それくらいわかるでしょ?

「どうせ無理だと思ってたよ。じゃあ帰る?」

帰ります。と即答すると思っていたけど、
彼女はいまだに周りを見渡しどうにか作れないものかと模索しているようだった。
本当に諦めの悪い子だ。

「シャだちさん。手伝ってくれませんか?」
「手伝うって何を?無理なんじゃなかったの?」
「なんだか...近い物なら作れる気がして...。」

そう言いだしたかと思えば僕に道路標識を1本取って来いと指示を出した。
あれ軽くないんだよ?わかってる??
...人を使うのが雑なんだよなぁ。



仕方なく彼女に言われた通り道路標識を1本持って帰れば、目の前でDANGERと書かれた黄色のテープを器用に何かの形にしている名前の姿があった。

「何してるの?」
「シャだちさん...!わ、持ってきてくれたんですね。ありがとうございます!」
「どーいたしまして。」

持ってきた道路標識を地面に突き刺し彼女の横へ立ち、その手元を眺めた。

「もう少し...うーん...あ!できた!!シャだちさん!これ、標識のてっぺんに貼ってくれませんか?」
「貼るって...これを?」
「クリスマスツリーには星が必要じゃないですか!」

そう、彼女は大量にある危険を知らせるあのテープを使い器用に星を作っていたのだ。
少し形が歪んでる気がするけどそこは名前らしいってことにしておこう。

「...はいはい。あそこに貼ればいいの?」
「はい!」

彼女が目を輝かせて言うから、やらないという選択肢が消えてしまった。
...っていうかクリスマスツリーというか、ただ道路標識にテープ貼っただけじゃないの、これ。

「完成ですね!この場所にぴったりなクリスマスツリーです!」
「でもこれ、ツリーっていうか...」
「なんですか??」
「...別に。」

名前も薄々気づいてるんだよね?これがどう考えてもツリーには見えないってこと。
そうだよね?そうなんだよね??

「まぁまぁ!とりあえず、シャだちさん。メリークリスマス!」
「はいはい。」



雪なんて降らないこの場所に、1本の雑なクリスマスツリー
たまにはそんなのもいいんじゃないの?
僕は必要ないけど。