照れ隠しの遠回し



今日は2月13日。時間は18時、家に帰ってご飯を食べて寝るだけ。
そんな私は学校帰りに沖奈まで遠出をしている。
理由は簡単。

足立さんにあげるチョコを買いに来た。

ただそれだけ。
本命なら手作りすればいいじゃん。なんてことは言わないでほしい。
本命だからこそ失敗したくない。本当だからこそおいしい物を渡したいんだ。
いろいろと足立さんのことは知っているつもりだけれど、私のような普通の高校生を足立さんがどう思っているかなんて知るわけもない。
あの性格だから私を利用してました。なんて言われても驚く内容ではないし、最悪殺されてもおかしくない。
そんな人物に恋をしている私もどうかしている...のかもしれない。

正直、足立さんがチョコレートを好きなのかなんてわからない。
いらなければごみ箱に捨ててくれるだろう。
それでいいのか私!とは思うけど仕方がないことだ。
これは全部、足立さんの性格の問題なのだから。

「これでいいかな。なるようになれ!」

当たって砕けろ。ってやつ。





次の日、いつも通りに学校へと登校していた。
会えたらいいな。って気持ちを少しだけ抱えて。

「前見て歩きな?」

イヤホンを通りこして聞こえてきた声に驚き、手元の携帯電話から顔をあげると
目の前にいたのは言うまでもなく足立さんだった。
こんな朝から足立さんがいるなんて思わなかった。きっとあれだ、朝の見回り。
ほら、あの、小学生の登校とか、そういう...。

「僕が車だったら死んでたんじゃない?」
「あ、足立さんは...車じゃない、です...。」
「たとえばの話だって。」

動揺しておかしなことを言ってしまった。
軽い気持ちだったのに、いざ目の前にいるとなると心臓が飛び出しそう。
これ以上心臓の音が大きくなったら足立さんに聞こえてしまう。
察しがいいんだよ、この人は。

「ごーめん!学校遅れちゃうよね!」

学校なんて遅れたっていい。

「僕も戻らなきゃいけないし...あーめんどくさ。」

少しだけ私に時間をくれませんか?

「じゃあね。またあとで。」
「まってください...!」

私の横を通り過ぎ、警察署へと戻ろうとしていた足立さんの腕を思わず掴んでしまった。
離すこともできず、驚いた表情の足立さんと、やってしまったという表情をしているであろう私が向き合ったまま時が止まっているようだ。

「名前ちゃん...?」
「あの、こ、これ、受け取ってください...!」

昨日買ったチョコレートを足立さんに押し付け、学校へ歩き出す。
今、顔真っ赤だ。絶対。

「あのさ、」

思い切って走り去ればよかった。でも、足立さんに呼び止められてしまったんだからしょうがない。
踏みつける、捨てる、中をばら撒かれるんじゃないか。なんて嫌な方向に考えてしまう自分がいる。
だって足立さんはそういう人だから。

「名前ちゃん以外から貰いたくないし、渡されたとしても捨てる。って覚えといてね。」
「...は、??」
「それじゃ、いってらっしゃーい。」

私が混乱している間に足立さんは警察署へと戻っていった。
足立さんのあの言葉、理解したいけど本当にそういう意味として受け取っていいのか不安になる。
私が頭悪いって知ってるならもっとわかりやすく手短に伝えてほしい...。
あ、でも足立さんってそういう人か。






バレンタインの日に私以外のチョコレートはいらないと言われたら
なんとなく感じるものはありますよ。