次会ったら覚えとけ
ふと気づけば赤い空の下
これは夢の中なのか、知らぬ間に私がこっちに来てしまったのか、それともここのあの人が私を呼んでいるのか。
確かなことはわからないけれど、この空間に1人取り残されるのは何度来ても慣れないものだ。
「ここどこ!」
と声を出してみても返事は返ってこない。
どこへ歩けばいいのかもわからず、ひたすら同じ場所をうろうろと歩き回っているような気がしてきた。
さっきもここを歩いたような気がするが、歩いていないような気もする。
でもここはそういう場所。いくら歩いても同じような風景が続いているんだ。
「もうやだ...。」
歩き疲れその場に立ち尽くす。見上げれば広がる変わらない赤色の空。
いっそこのまま意識を手放してしまえば、現実世界に帰れるのかもしれない。と考えたその時だった。
手放しかけた意識を引き戻したのは近くから聞こえた呻き声。
1つや2つではない人間とは違うその声の主を探せば、地面を這いずり動き回っている黒い物体が視界に入った。
でも今は夢の中だ、いくら襲われても目が覚めたら現実なんだ。なら逃げなくても問題ない。体を切られた瞬間目が覚める。とそう思っていた。
気がつけばその黒い物体に周囲を囲まれ逃げ道はない。でも大丈夫、だってこれは夢だから。なんて考えていられる余裕があっただけマシだ、目の前の黒い物体の手が私めがけて向かってきている気がする。そうか、彼らは手で戦うんだ。夢とはいえ妙にリアルだな。現実の私、早く目を覚ましてよ。
もうおしまいだ。と、頭を抱えたその時だった。
「その子に手出しちゃだーめ。」
耳に入ってきた聞き覚えのある声、だけどいつもとどこか違うのは"あの人"の声だから。
「シャだちさん...私のこと助けてくれたんですか?」
「あのさ、どうして逃げなかったの?」
「ここ夢の世界じゃないんですか?」
私がそう言うとシャだちさんは深くため息を吐いた。軽く舌打ちをしたと思えば、今度は私の頬をつまみギリギリと音がするくらいに強くつねりはじめた。
「痛い痛い!痛い!!」
「痛いんでしょ?なら、夢じゃないってこと。わかる?あー、名前の弱いその頭じゃわかんないかー。」
「わかりますよ...。」
つねられた頬がひどく痛む。しかし痛いということは現実だ。ここは夢の世界じゃなかったんだ。
そうなると、あのとき黒い物体に襲われていたら今頃私は死んでいた。ということになる。
「シャだちさんって意外と優しいんですね。」
「バーカ」
どうやら私は寝てしまっていたらしい。
目の前に広がるのは見慣れた天井。あぁそうか、私はいつの間にか寝てしまっていたんだ。ということはやはりさっきの出来事も全て夢の話。
「あ、起きた?ぐっすり寝てたから起こせなくて。」
「足立さん...私、そんなに寝ちゃってたんですか?」
「いつの間にか、ね?...ってほっぺどうしたの?」
足立さんが出した鏡を見ると頬につねられた跡がしっかりと残っていた。
つまりあの出来事は夢ではなかったということか...。
しかしこんなに跡がくっきり残るほど強くつねるなんて何を考えているんだあの人は。
「寝ぼけてつねっちゃったのかも...。」
「名前らしい....。」
今度会ったらこれでもかっ!てくらいにやり返す