にゃんとかかんとか


「ねー、起きないの?」
「...寒い」

彼女は起きている。なのにベッドから出てこようとしない。
寒いとは言っていても体調が悪いわけではなさそうだ。...いつものように布団に丸々潜ってしまっているけれど。

「パーカーください。」

布団の隙間から彼女の目が覗いている。正直ただのホラー映画だ。
近くに置いてあった僕のパーカーをベッドの上に置くと、彼女の手が隙間から這い出て布団の中へとパーカーを掴み吸い込んでいった。
なぜこんなことが目の前で起こっているのか状況が出理解できないけれど、彼女が寒いというのなら仕方がないことなんだろう。

「おはようございます。」

やっと布団から出てきた彼女はいつものように...と言いたいところだったけれど、なぜかフードまで被っている。
なぜフードを?寒いから顔も暖めたいだとか彼女なら言い出す気がするからわからなくはないが...。

「寝癖が酷いんです。」
「なんでわかったの?」
「視線で気がつきました。」

無意識というのは怖いものだ。僕は見ているつもりなんてなかったんだけど。

「でも寝癖ぐらいよくない?フード被らなきゃいけないくらいに髪が立ってるとか?」
「フード被らなきゃいけないくらい大変なんです。」

あまり名前と寝癖がどうのこうのなんて会話をしたことはないけれど、名前が寝癖を気にするタイプだと思ったことはない。
むしろ足立さん見て!と見せびらかしてくるタイプではないだろうか...。
そう考えてみるとあのフードの下、怪しい。

「でもさぁ。やっぱり寝癖ぐらいよくない?」
「ちょっと、引っぱらないでください!ほんとに大変なんです!」

彼女のフードに手をかけ、強引にでも真実を暴いてやろうと力を入れる。
僕が力を入れれば彼女も今までにないくらいの力を入れてくる。それ以上やられたら僕のパーカー破ける。パーカーが死ぬ。

「パーカー破けるって!!」
「え、嘘!?」

名前が力を抜いたタイミングを見計らいフードをめくると

「え...?」
「あー、もう。だから嫌だったんですよ...。」

彼女の頭に髪色と同じブラウンの毛色を持つ猫耳がはえていた。
正直これには僕もどう反応したらいいかわからない。わからないというより状況についていけない。
僕は夢でも見ているのだろうか。正直正気でいられる気がしない。

「もー、ばか。足立さんのばか...。」
「え、ねぇ。...尻尾は?」
「やだ!」
「ってことは尻尾もあるんだ。」

なんて会話をしている最中に、彼女の背後に耳と同じ色の尻尾がチラついた。
感情に合わせるように動いている。毛を逆立たせてぴんっと立っているということは怒っているということだろう。

「すごいすごい!本当に尻尾を見れば感情がわかるんだ!」
「やだ離して、やだ触らないでください。」
「正直な話、男がこれを見て正気保てると思う?」

保てる男がいるのなら教えてほしい。
その猫耳を触られ恥ずかしそうに甘い声をだしている自分の愛する彼女が目の前にいるというのに、何も感情を抱かないのはおかしな話。

「そんなに睨んじゃって。人間に慣れてない本物の子猫みたい。」
「...ばか」
「なーに?子猫ちゃん。」

歯を見せながら怒りを露にする名前はまさに猫の威嚇そのものだ。
よく見れば犬歯がいつもより伸びているようにも見える。
耳と尻尾どころか歯にまで影響が出ているとは...。

「足立さんの...ばかーーー!!!」

怒りが爆発したのか名前が飛びかかってきた。
あー、これはもう少し躾が必要な子猫かもしれない...。



言いたいことがあるなら
ニャンとか言ったらどうなの?
子猫ちゃん。