悪い大人って、


「足立さんって彼女いないんですか?」

なんて聞いてくるのはこの子。苗字名前ちゃん。
ジュネスのフードコートで突然彼女に勉強教えてください!って言われたのが知り合ったきっかけ。

「いそうに見える?」
「見えません。」

なら聞くな。と言いかけたのをグッと堪えた。
むしろ堪えられたことを褒めてほしい。

「名前ちゃんは彼氏いないの?」
「いませんよ。いるように見えます?」
「見える。」

彼女は外見も性格も悪くない。
これ以上ないくらい喜怒哀楽がはっきりしていて表情豊かな子だ。
だからこそ学校の男がいくらでも寄ってきていると思っていた。

「名前ちゃんはどんな男が好きなの?」
「んー。普通じゃない人...?」
「何それ」
「私と真逆の生活してる人...ですかね。」
「犯罪者が好きとかそういうこと?」
「犯罪者...はちょっと言いすぎですけど...でも、そんな感じですよ。」

この子いつか絶対悪い大人にひっかかる。
むしろ僕がひっかけてあげてもいいぐらい。

「じゃあ、足立さんはどんな人が好きなんですか?」

この話の流れじゃ確実に来ると思っていたけど、実際にそう聞かれると答えに困る。

「なんだろうなー。名前ちゃんみたいな子かな。」
「私みたいなってどういうことですか。」
「悪い大人にひっかかりそうな子だから。」

何を言っているんだこの人は。とでも言いたげな表情で彼女は僕を見ている。
しかし、どうやら何かをひらめいたらしく驚いたような表情をした。
ね、言ったでしょ。この子は表情が豊かだって。

「悪い大人にひっかかりそうな私を守ってくれるってことですか!」

やっぱりこの子は何かがおかしい。
何かってそれはもう頭でしかないんだけど、おまけに足立さんはいい人だから!なんて勝手に話進めてるし...どこからそう予想したんだか...。

「僕、いい人じゃないけど。」
「警察の人ってみんないい人じゃないんですか?」
「あー...あ。そろそろ仕事戻らないと...それじゃあね。あ、そうだ。悪い大人って結構身近にいるってこと覚えておきなよ。」

僕がそう伝えれば、またすぐに表情を変えて驚いた顔でまわりをキョロキョロと見渡している。
あの子、落とすにはちょうどいいけど落とすのはもったいない気がするんだよね。





ねぇ、
悪い大人ってすぐ近くにいるんだよ?