パズル
まだ春だというのに長袖では少し暑いような気がする今日この頃。
僕と彼女は2人そろって部屋の中で無駄な時間を過ごしている。
彼女はテーブルの上に置かれたスマートフォンの画面を指先で上下左右に操作しては頭を抱え溜め息を吐いてる。
とは言っても、決して悩み事を抱えているわけではない。...大きく言えば悩みなのかもしれないけれど。
彼女は今パズルゲームに夢中なのだ。同じ色を3つ以上揃えるタイプの一般的なパズルゲーム。
1回始めたらなかなか飽きないんだよね、この子。
かれこれ1時間以上は画面に触り続けている気がする...今に始まったことではないけれど。
「名前ってさ、今も昔も変わらないよね。」
「そうですか?何かしら変わってませんか?」
「さぁね、テトリスがパズルになったぐらいじゃない?」
彼女がまだ高校生だったころはスマートフォンはあまり普及していなかった。
あの頃の彼女は永遠と愛用の携帯電話に入っていたテトリスをやり続けていたものだ。
上から降りてくるピースをどこに入れたらいいかを突然聞かれたときはさすがに困った...。
早く早く!なんて急かしてくるし。結局解決できたからよかったけどさ。
あの集中力をどうして勉強に使えなかったのかは考えても無駄、でもこの子はマジメにやれば数学は意外と得意だったりするんだろうなと思うことが度々ある。
「あだちさーん。これやってください。」
どこか疲れたような表情をした彼女がパズルの画面を僕に見せてきた。
かわいい彼女がそこまで言うならしかたがない。
端末を受け取り指をスライドさせ、次々にピースを消していけば隣から声が聞こえてくる。
「はい、おしまい。」
「...すごい。ありがとうございます!よかった、一安心。」
僕からすればただのパズルでしかないけど、彼女からすれば嬉しい出来事だったのだろう。
「そんなに?」
「はい。足立さんも変わってないんだなって。」
「なにそれ、僕のこと試したの?」
「偶然です。本当に先に進まなかったから足立さんにお願いしてみたら昔の自分と重なったので。」
言われてみれば確かにそうだ。物は違えどやっていることはあの頃と同じ。
そんなの自分でやればいいと突き返すこともできたのに、僕はそれをしなかった。
「なーんだ、結局僕も変わってないってこと?」
「そういうことです。」
「僕たち変わってない者同士ってことか。」
これからも変わらない者同士仲良くしてくれる?拒否権なんてないんだけどね。
「じゃあ私変わらずに高校生気分でいますね!」
「それはどうかと思うよ。僕は、」