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私の家に足立というあの男の人が来るようになってから2週間。
どこからか私の住所仕入れ、強引に家に入り私の連絡先を取っていった。
これって立派な犯罪だと思うんだけど、あの人は警察だというから意味がわからない。
意味がわからないのにあの人の存在を誰にも言っていなければ、被害に遭ったということも相談していない。
「スバル?」
「ん、あ、なんだっけ?」
「ずっと返事してくれなかったから。」
「あ...ごめん。」
今目の前にいる悠くんにさえ、何も話すことができていないのはなぜなのか。あれだけ悠くんの悪口を言われたというのに私は何もしなかった。
きっと、あの人が私のファンだと言っていたことが引っかかっているのかもしれない。
どう考えても相談するべき案件なのに何を悩んでいるんだろう...。
「最近元気ないけど何かあった?」
「そんなことないよ!私が元気にするのが私の仕事なのに元気ないように見えてたらダメだよねー。」
みんなを元気にしてあげるって言ってる身の私が誰かに元気にされているなんて...。
「無理したら怒るよ。」
「大丈夫だって。ありがと悠くん。」
「それじゃあ俺撮影あるから。」
私がいってらっしゃい。と言う前に私の唇と悠くんの唇が重なった。
何も変わらないいつもの風景。
こんな日常だけが続けばいいと思っていても、どうやらそう簡単にもいかないらしい。
もうそろそろ17時といったところだろうか。
番組の撮影終わりに自宅の近くの公園で1人ベンチに座っていると、
「ひさしぶりだね。すばるん。」
聞きたくもない声が耳に入る。
完全に身を隠しているつもりだったのにどうしてこの人にはバレるんだ。
「こんな所でなにしてるの?お家すぐそこなのに。」
うるさい。いい加減にしてほしい。どこまで私に付きまとえば気が済むんだ。
沸点に達しそうな感情を持っていたペットボトルを強く握りしめ抑え込む。
「隣座るよ?」
この人が隣に座るというから私はベンチの端へと寄る。
しかしその時視界に入ったはらりと動く黄色の生地に思わずこの人を見つめてしまった。
「...黄色。」
「似合う?」
「そういうわけじゃ...。」
この人が私の鞄と同じ黄色のコートを着ていたことに驚いた。
「...黄色って自分を見てほしいって意味持ってるの知ってました?」
そんな話をこの人にしたところでどうしようもないとは思うけど。
「僕はスバルに見てほしいよ。じゃあスバルはどうして?わかった。あのガキに不満あるんだ。もしかしてアイドルの桐谷スバルとしか見られてないとか?常に大勢から見られてるスバルが自分をもっと見てほしい。なんて贅沢だよねぇ。僕ならアイドルとしての桐谷スバルも、1人の人間としての桐谷スバルも両方愛してあげられるのに。なーんてね。」
「私のこと何も知らないくせに語るのやめてください。」
「何も知らない?冗談キツいんじゃない?僕はスバルのファンだって言ってるじゃない。今までスバルがインタビューで喋ってたことちゃんと覚えてるんだけどなー?」
寂しがり屋だから構ってほしい。好きって言ってもらえたら嬉しい。愛してるならもっと嬉しい。
この人の口から呪いのように流れてくる今まで私がインタビューで話した言葉の数々、本当にこの人は私のことをよく知っている。
感情がぐちゃぐちゃだ。溢れてこないでほしいものが目から溢れ出してくる。
「なんで泣いちゃうかなぁ...。僕泣かせるつもりなんてないし、スバルを泣かせたいわけじゃないんだけど。」
「私のファンなら、泣いてる時どうしたらいいか知ってますよね...。」
「あー、はいはい。でもそれ、僕でいいの?」
「嫌なら帰ってください。」
「...はいはい。」
泣いているときは
何もしないで
そばにいて。