失うことに慣れたはずなのに
「ぎぃやぁぁぁぁ!」
学校からの帰り。
コンビニでどうしても食べたくなったプリンをかって、ついでに浦原商店2階で寝込んでいる教え子にも食べさせてあげようと、袋を微か揺すりながら、意気揚々と浦原商店の扉を開けた瞬間、ものすごい悲鳴が聞こえてきた。
そのあと、ボゴン!バタバタ。と鈍い音も。
な、なにごと!?
強盗なんて、こんなおんぼろ商店に入るわけがないし、何より店長が…まぁ、多少奇人だが強い。そういった部類のものではないとは思うけど…。
急いで靴を脱ぎすて、揃えもせずに急いでバタバタと階段を駆け上がり、そして灯りついていた和室に滑り込んだ。
「何がっ…。」
……え…。
「おぉ、おかえりなさいませ、常盤殿」
「…て、テッサイさん?
…これは、何事ですか?」
部屋の隅に正座をして喜助さんと黒崎のやりとりをみていたテッサイに、視線を落とせば、反対側から声が聞こえた。
「おぉ、常盤。
帰っておったか。」
喋る黒猫。
「夜一さん…。」
明らかに喜助さんに乗せられた感満載の黒崎一護を見ながらげんなりする。
障子戸の前にちょこんと座り、喜助さんと黒崎を見つめていたのであろう夜一さんを見れば、彼女もまた私を見上げスッと目を細めた。
「尸魂界は通例、極囚の刑の執行までに一月の猶予期間をとります。
それは朽木サンの場合も同じ筈。」
「死刑っ…」
「人間が死ぬのとカタチは違いますけどね。」
なぜかそこで不気味に微笑む喜助さん。
「これから黒崎サンをイジメるのに十日間。
尸魂界への門を開くのに七日間。
そして、尸魂界へ到着してから十三日間…。
充分間に合う。」
「…十日間で俺は、強くなれるか?」
「モチロン。
キミが心から朽木サンを救いたいと願うなら、…想う力は鉄より強い。
半端な覚悟ならドブに捨てましょう。
十日間アタシと命のやり合い、できますか?」
「当たり前じゃねぇか!」
そう高らかに宣言した黒崎に、喜助さんはふっと帽子の下で笑みをこぼし、私はそんな二人のやりとりを、ただ静かにじっと見つめていた。
「そんじゃ、黒崎サン。修行は夏休みに初日からにしますので。」
「え!今日からじゃねぇのかよ!」
「あなたはもう少し休養が必要ッスから、明日学校が終わったら来てください。」
表での喜助さんと黒崎の会話を聞きながら、ズズッとお茶を啜る。
そして、隣に座ってせんべいをバリバリ食べる夜一さんをみた。
「あの子を本気で尸魂界に送り込むんですか?」
「そうじゃ。」
「……人間、ですよ。」
「知っておるわ。
しかし、すでに死神のチカラを持ち合わせておる。
お主もみたじゃろ、大虚を追い払ったところを。
あれはもっと強くなる。いや…強くなってもらわなければ困る。」
ギラリと夜一さんの金色の瞳が輝いた。
その目つきで、確信した。曲げようのない強い気持ちを。
どうやら本気で黒崎を尸魂界に送り込むらしい。そのために霊力を取り戻させてまでして。
この人たちに、そこまでしてルキアを助け理由なんてないはずなのに。
でもまぁ、夜一さんと喜助さんがそこまでしてやると言っているのだから、私だけが黙って見ているわけにはいかないだろう、師匠がやると言ったからには、ね。
朽木ルキア、死刑執行まで
あと、13日。
(枯れる理由を人のせいにしたら、あなたは私を殺しますか?)