嘘を重ねた人格からは

浦原商店地下。


そこは、通称勉強部屋と言われ当初は夜一さんと喜助さんの模擬演習に使われていた部屋だ。
ちなみに、テッサイさんお手製。

そこで、数日前から黒崎の修行が始まった。


学校も夏休みに入り、黒崎は意気揚々とやってきたのだ。
けど、きっと今では後悔しているだろうな。


だって、最初の課題が死神の力を取り戻す、なんて常識とはかけ離れたことをやろうとしているんだから。


毎日のように聞こえてくる怒号といっこうに感じない黒崎の霊圧に若干死んでいるんじゃないのかと心配になり、時々勉強部屋を覗くが、喜助さんとジン太と雨が偉いでかい穴を覗いているばかりで、一向に変化は見受けられないのだ。


とまあ、私はそんな様子を遠くから眺めているだけだと思ってたんだけど、



「とー!はー!」
「おぉぉぉぉぅ!」
「あぁぁあ、ちゃぁぁ!
「ふんぬぁぁぁぁぁあ!」
「えーいっ!」


……え、何これ…。酷くない?


取り壊し寸前の廃ビルの最上階。
無機質かつ土臭いにおいが充満する中、その場所には似合わない雄叫びを上げている男女。


朽木ルキア救出のために、喜助さんとの修行を始めた黒崎一護のクラスメート、オレンジ色の髪をした井上織姫と褐色の少年茶渡泰虎だ。

そして彼らは、先ほどからなぜか奇声を上げている。何というか、力一杯。

今の若い子って分からないわ…。


そんな姿を階段の踊り場の手すりにしゃがんで見つめていると、それ見かねて呆れたように夜一さんが動き出した。



「まるでダメじゃな。」

そうなぜこんなことになったか、と言うと。





つい数時間前。
夜一さんから、いきなり「どこか広い場所を見つけてくれ」と、言われたことがそもそもの始まりだった。



「は?…修行?
…私の?」
「莫迦者。
…井上織姫、茶渡泰虎じゃ。」


その名前に、思い浮かんだのは一年三組の生徒の顔だ。
どちらも優秀な生徒だったはずだ。


「あぁ、あの子達もですか。」


先日、黒崎一護が喜助さんと修行をするという話を聞いたばかりだ。
まさか、彼意外にもいたとは。


「数は多い方がいいからの。」


ギラリと鋭い視線を向ける夜一さんに「で、…私にどうしろというんです?」と首を傾げた。




「ちと、修行を手伝ってほしいんじゃよ。」



修行ってを手伝うって…。

「夜一さんだけでは手に負えないのですか?」
「まぁ、そう言うな、常盤。」


フラフラと尻尾を遊ばせばじっと私を見ている夜一さんに、はぁ。とため息をついた。


「分かりました。」
という涙ぐましい脅しがあったのだ。


まったく夜一さんは、相変わらずだ。昔からなんにも変わっちゃいないわ。
なにやら言葉を交わす3人…いや、2人と1匹を眺めながら、あぁ…とため息をついた。


おーい、まだかいなー。


そろそろここに座っているのもきつくなってきた頃。
なにか気がついたのか、目をつむった井上さんのヘアピンが一瞬光る。
そしてぽぽぽぽ。と井上織姫の周りに何かが飛び出てきた。



が、なぜか井上織姫に襲いかかったように、髪を引っ張りちょこまかと動いている。



なんなの、この子たち。




やっぱり若い子って分からない。

それからただただ、彼らの修行を見つめるばかりの日が続き、ようやく茶渡も自信のチカラを拾得できたらしい。


先日、ビルの壁をぶち破ったそのチカラ。
その姿を見て、どこかに埋まっていた、始めてみる物にたいしての、探求心、好奇心がうずいたが、そこはぐっとこらえはぁ、と一つため息を落とした。



そして、ルキアが尸魂界に戻ってから5日後。
ようやく私の出番が来たようだ。





「さて、茶渡。

お主にはちと、実践で使用できるまでになってもらわなければ困る。」
「…え?」
「…夜一さんが、戦うの?」



夜一さんの言葉に井上さんが首を傾げる。



「常盤、出てこい。」



おっと。ようやくお呼びのようだ。

マスカット味のポッキー(この味癖になる)をポケットにねじ込み、斬魄刀を掴むと、鉄製のさびた手すりに足をかけ、蹴った。


「やっとですか。」
「またせたの。」


まったく詫びるつもりもない夜一さんに、ため息をつくと、後ろからビシバシ伝わってくる視線に耐えきれずに、振り向いた。



「…あなたは…ー」




目を丸くして驚く彼らに、にこりと笑った。




「こんにちは。
井上さん、茶渡くん」


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