尸魂界

「喜助さん、どういうつもりです。」
「……。」

ピリピリとした空気が立ち込める中、浦原の隣で膝をつき一護を見つめていると、彼の横に音もなくおりたった女に目を丸くした。

目が覚めるような金髪に、灰色の目。浦原より少しだけ低い身長の女。斬魄刀らしき鐔のない刀を持ち、浦原を睨みつけているが、死覇装は見に纏ってはいない。
死神ではないのか?静かに2人の気配を探っていると、浦原は馴染みのある姿に帽子の下で小さくほほ笑んだ。

「何をする気です?」
「黒崎サンの力を目覚めさせる…っと言えば、あなたは信じてくれますか?」

ちらりとこちらを見た浦原に顔を歪める。
目覚めさせる?そんなことをしたらどうなるのか、言わなくたってわかっている。自分の運命でさえも。

「もしあなたが本当にそう考えているのなら…何が目的ですか?
それにこんなことをしたら……あなたがよく分かっているでしょう?」

いくら尸魂界ではなくとも、隠密機動が監視している世界に含まれる。
その現世で、霊圧を飛ばしメノスと戦いそれがバレれば、必ず向こうに報告がいく。
そしていずれ、誰かが黒崎の力を消しに来るだろう。

そして、その黒崎に力を渡した私もも、ただでは済むまい…。そんな犠牲を払ってまでも、一護の力を呼び覚ますことに、どんな意味があるのだろう。
力をつける前に、下手すれば一護は殺されてしまう。

「そんなことをしたら、彼はどうなるか、貴方にも分かりますよね。」
「えぇ、もちろん。」

険しい表情を浮かべ、浦原にくってかかる女は、どうやら死神の事情を把握していて、その上浦原がやろうとしていることを止めようとしている。

こいつは何者か。


しかし、そんな思考を遮るように、かっと赤い光がまるで太陽のごとく私たちを照らす。次の瞬間、私は自分の目を疑った。


クイッと服の裾を引き雨が指差す方を恐る恐る見れば、一護はあのバカでかい斬魄刀で虚閃を受け止めていた。

その後ろ姿に、思わず息をのんだ。

あれ程の霊圧が集中した虚閃を受け止めた。
しかも、それに伴って一護の霊圧が、異様に増大し始めているのがわかる。
なんて霊圧だろうか。
これが最近人間だったものの霊圧か?

全て規格外だ。
大虚が現れたこと、虚閃を受け止めたことも、この死神もどきとは思えない霊圧も。

その後も、凄まじい霊圧同士の競り合い。その衝撃で霊子のカケラが流星のように辺りに飛び散る。
黒崎の霊圧は先程の虚の集中された霊圧を軽く上回るほど。

爆風のような強い波動が体を突き抜ける。舞い上がる瓦礫や土埃に思わず目を細めた。
激しい霊圧と赤い光に包まれながら、私はただただ喜助さんを横顔を睨みつけ、そして、再び一護に視線を移した。


ようやく晴れた視界の先には、一護が閃虚を弾きかえし、一気にすさまじい霊圧とともに、黒崎一護の斬魄刀が大虚の体を引き裂いていた。
等身大の斬魄刀を振りきった彼は、すたっと地に降り立つ。


「大虚が…帰って行く。」


誰が呟いたのか、空にできた大きな亀裂の奥に消えていく大虚を黙って見つめるしかなかった。

その姿を横目で見た後、なにやら空に高らかに手を掲げ、叫んでいる一護の背中に目が離せなかった。

奴の、恐ろしいくらいの成長と吸収力。そして何よりも、折れることのなき信念にかけ、死神の力を受け渡してのだ。

しかし、今後起こるであろう事に私は覚悟を決めなければならなかった。


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