過去にもできず泣きたくなった
何となくいやな予感はしていた。
昔から当たらない私の勘が、今日ほど当たるな。と強く思った日はない。
先日の定期テストづくりと丸つけと成績を出すことに全体力を使い切った私は、当分は何をする気にもなれず、毎週末は引きこもる生活を続けていた。
最近発売したばかりのマスカット味と言うふざけたポッキーをくわえ、浦原商店の屋根の上に夜一さん(クロネコ)と共に寝転び、ぼんやりと雲の流れを見つめていた。
しかし、そんな澄み切った空は、あることをキッカケ、次第に澱みくすんでいった。
浦原商店一階。
胡散臭さが全面に出た駄菓子屋。
そこを偶然訪れていたお客さんが持っていた伝令神機が、静かな店内にけたたましい音が鳴り響いた。
その懐かしくも耳障りな音に、体を起こすとパキンとポッキーが折れた。
「虚ですか。」
「そのようじゃの。」
しゃべるかわいい黒猫夜一さんは、金色の瞳を細め遠くの空を睨むように見つめた。
ベランダを伝い、騒がしくなった一階に降り、物陰から様子をうかがう。
お客が来ていたようだ。
お客さんは、…ルキア。
彼女の姿を確認した後、すぐにこの店の店主に目を向ければ、どうやら彼ももこの気配を感じたらしく、険しい顔つきで何かを探っているようだ。
しかしその中で、音はなんの前触れもなく、突然すぐにぱたりと静まったのだ。
ギョッとした二人をあざ笑うかのように、再びけたたましい音を立てて鳴り出す伝令神機に眉を潜めた。
一瞬故障と言う文字が頭をかすめた。
しかし涅マユリ率いるあのイカレタ奇人変人の巣技術開発局が、こんな柔な物を作るはずがない。
では、原因は?
先ほどから、狂ったかのように、止まっては鳴りが、何度も繰り返さす伝令神機を睨みつけながら、必死に答えを出そうと模索していた。
しかし、そんな私をますます陥れるかのように、仕舞いには鳴り止む事がなくなる程、無機質な甲高い音が続く程になっていた。
その音は、この世界の明らかな異常を知らせていたのだ。それが、故障ではないとなれば。
「何だ…これは。」
緊迫した空気が浦原商店を包む。
どういうことだ。虚の数がどんどん増えているということだ。
こんなこと有り得ない。
しかし、伝令神機が全て事実だというのなら、ものすごい数の虚がこの現世に現れ始めていると言うことになる。
伝令神機の異常な反応に慌てて外へ出たルキアは、違う空に一瞬言葉を失くした。
ちょうど見上げた空。その一点に黒く嫌な気配が充満している。
台所の窓からふと空を見上た青空に、ぴしぴしと亀裂が入っていくのが見える。そして、そこから黒い靄と同時ににゅっと虚が姿を現した。
「虚っ!!
くそっ、一護がいないというのに!」
そう吐き捨てたルキアは、人間の体のまま走り出した。
そんな彼女を目で追い睨みつけるように見ていた喜助さんの隣に、静かに並んだ。
「どうして止めなかったんです?
彼女は、もう人間ですよ。」
「おや。
やはり気づいてたんスか。
朽木さんのこと。」
さすがっすね。そうニヤリと笑う浦原さんの足を無性に踏みつけたくなったが、そこはぐっと我慢し代わりに深くため息をつく。
「学校から、よく飛び出していきますから二人で。それに、最近では別の霊圧がウロついていたので、少し考えればわかることです。」
「なるほど。」
相変わらず勘がいいっすねー。
そう言って喜助さんは帽子で顔を隠すように、小さくうつむき帽子の鍔に触った。
彼女がここから去ってからも、虚の気配は減ることなく増える一方で、もうかなりの虚が出てきた頃だろう。
歩けば必ず、高い確率で虚に当たる。まったくイカレているな。
じわじわと時が過ぎゆく中で、内心焦り始めた私とは違い、喜助さんはこの展開を予想していたかのように、このあと何がおこるのかを知っているかのように、パチンと扇子を閉じると、深緑の羽織を翻し店の奥へと消えていった。
それから、その姿を不審に思いながら、斬魄刀を片手に再び屋根に登り寝転んだ。
さっきまでのきれいな空は消えてなくなったが、渦巻く虚の気配がそこら中に感じられるが、どうも動く気にはなれなかった。
「常盤」
「はい。」
「行かんのか?」
「どこにです?」
「喜助と共に、じゃ。」
「喜助さんが出たのなら、私の出る幕ではないでしょう。」
「…そうじゃな。」
そんな夜一さんの言葉を最後に、私はゆっくりと瞼を落とした。
あれからいくつ時がたった?そんなこと分かるわけがない、そんなことよりも、今まで以上の霊圧。ただの虚ではない。
ぼんやりと開いていた目がパッと開き、眠気などどこかに飛んでいった。
まずいな。
見上げた先には先ほどのものとは、比べものにならないくらいの大きなヒビ。
それに目掛け、虚が集まってきていたのが、感じる。数は5…10…いやそれ以上だ。その異様な久しく感じなかった気配に、背すじがぞっとした。
その予感が、まさに現実になってしまった。
西の空に入った亀裂が、バチバチと音を立てて、大きくなっていく。
その黒く不気味な世界から顔を出した大虚。
空に空いた穴から出てた大虚は、周りにいた虚たちは向かいほえ始めていた。
遠くからでも分かる、つんざくような不気味な鳴き声。
そして、大虚は長い舌で周りの虚を食べ始めた。
辺りにはバリバリという音が響いていた。
ようやくやばいな、と真剣に考え始めた私は、斬魄刀を握り締め、浦原商店の屋根から飛び降りると、気配など探らずとも分かる大虚に向かって走り出した。
mae tsugi
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