終わった、のか。あまり実感がわかない。元々長い間一度もあってもなかったのだ。だからか余計に振られても、その実感がわかない。でも後悔だけはあふれでてくる。あのときああしてればよかった。そう考えてしまうのはまだきっと、あいつのことが好きだからだろう。
気がついたらあいつとであった場所、つまり青道高校に来ていた。一年の時、レギュラーいりした俺に先輩が寄ってたかって、みたいな状況になった。別にそんなの今までよくあることだったし、練習に係わるようなケガじゃなかったらどうなってもいいって覚悟くらいあった。そしたら突然上から水が降ってきた。

「すみませーん!まさかこんな人気のないところに人がいるとは思わなくてっ。わたしほんとにドジでお恥ずかしいです」

のんきな声が聞こえて顔を上げると女が眉を下げながらこちらを見ていた。そして突然へらりと笑い、でも先輩たちのやってることと比べれば全然恥ずかしくないですね!ねぇ、先輩。それカッコ悪くないですか?なんて言って先輩を怒らせた。何を言われてもニコニコとして早く着替えないと風邪ひきますよー?なんてのんきに言って。ほんとに、かっこよすぎて一瞬で落ちた。
それからあいつがだれなのか必死に調べた。やっとあいつがだれか分かったときには、ついでにあいつの好きな男も知った。伝える前に失恋。それでもあきらめきれなくて、あいつが失恋したと知ったときを狙って声をかけた。あれを気紛れだとお前は思ってるかもしれないけどあれはそんなんじゃない。ずるがしこいやり方をしただけだ。弱ってるところに付け込もうとしただけ。
それでも手に入れるのには苦労した。どれだけ伝えてもあいつには勝てなくて、どれだけあいつよりも思ってもあいつがなのの心の中を占領する。俺を見ろよ。あいつじゃなくて俺を。ここにいるのは俺だ。あいつじゃない。何度その言葉を飲み込んだか、数えきれない。
それでもやっと捕まえれたのに、あんなに幸せだと思ってたのに、それを自分の手で壊すなんて思ってもみなかった。俺は自分が思ってるよりほんとに不器用なんだな。一人で自傷気味に笑い大きくため息をついた。この失恋の傷、そうそう治らねぇよな。
結婚って何。なんでいきなりそんな話になってんの?お見合いでもきたの?そんなやろうと幸せになれるの?もう、俺じゃダメなのか?
「だめだから、フラれたんだろ」
なんでこんなに未練がましいんだろう。一時は別れようとか考えてたくせに。あー、情けねぇ。いやそういえばあいつの前でかっこいい姿見せるのなんて野球ぐらいしかなかった気がする。何でも許してくれるから甘えてたし。でもあふれて止まらないこの思いをどうしろってんだよ。

「すきだー!!お前が好きなんだよどうしろってんだー!!」
「さすがにそれは恥ずかしいって」

とりあえず叫んでみるかとか自分にしては安易な考えだとか思いながらも投げやりで思いっきり叫んだら人の声がして驚いて振り返す。照れたような顔をしたなのをみて自分が何をしたのか思いだし顔に熱が集まっていく。まさか本人に聞かれると誰が予想するだろうか、いやしないだろう。なんて余裕ぶって反語を考えてみるくらいには焦っていた。ああ、というかさ、ほんとに・・・・今目の前に現れたら・・・・

「やっぱ、好きなのやめられそうにねぇよ」

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