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王族という身分に生まれたために、彼らは剣をはじめとする武術も、国内の情勢、経済、他国との繋がり、その他にも多くのことを学びそして、国を守らなければならない。
そのために、慣れさせなければならない。毒に。
今回は今年に入って1回目だ。前回は、私がここに来る前で、室長がやったと聞いている。
「ご存知だとは思いますが、まずは少量から徐々に増やしていくようになります。前回の最終量の半分から始めます。」
「あぁ。」
当日は、朝から城中に張り詰めた空気が漂い、皆の口数も少ない。
原因は本日行われる試験のせいだろう。
私は今日から殿下につきっきりで、中毒試験を行う。
今回の観察期間は、3日間。死なない程度の毒を飲み、その後の状態の変化を事細かに記録していく。
それを数ヶ月開けて何度も繰り返し、からだをどくになしていく。
私と室長の指示のもと朝から、殿下の部屋に大量の薬学書と、薬瓶が運び込まれた。どう
今日までに、前回の記録を元に私が調合した殿下専用の毒薬。
体重や身長、殿下の体調を元に何度も計算をして打ち出した数字を元に作成したものだ。
その透明な液体を、小さいグラスに移し、サイドテーブルに置く。
「殿下、これを飲んだら横になってください。」
「分かっている。」
「開始5分前です。」
しんと鎮まる室内は、いつも以上に人が集まり、ベッドに腰掛ける殿下を心配そうに見つめている。
「殿下、何かあればすぐにおっしゃってください。」
「あぁ、わかっているよ。」
「はい。」
「開始時刻となりました。」
時の計測をする担当が告げた開始の合図に、私は殿下に毒を手渡した。
そっと殿下の手に手を重ね、視線を重ねる。
毒を飲む瞬間、一瞬彼が笑った気がした。
彼は、毒を飲むとゆっくりとした動作で、ベッドに横になる。これから、殿下と毒の戦いだ。苦しむ彼を、観察対象としてて、見なければならない。
ここからは、化学者として薬剤師として。
3月2日 投与開始1時間。
現時点での変化はとくにみられない。脈、呼吸、体温共に安定。要観察続行。
投与開始8時間。
呼吸浅く、冷感あり。顔色青白いが、脈は安定。要観察。
投与開始12時間。
体温38.9℃。熱感強く、呼吸の乱れあり。痛み等はなし。不穏症状も見られず。観察続行。
追加投与 5時間後。
歩行困難。呂律が回りにくくなっている。呼吸荒く、顔面蒼白。脈は安定。観察続行。
追加投与 15時間後。
呼吸の安定見られてきた。体温36.9℃。体温、呼吸共に安定してきた。
解毒処置を行う。
「殿下。」
「…何だ。」
ぼんやりとする彼の顔を覗き込みながら、ベッドのそばにしゃがみ、腕をまくる。
「解毒剤を注射します。少し痛いですよ。 」そう声をかけ、腕から解毒剤を注射した。
「本日は、以上になります。
解毒剤を注射しましたが、これから数時間は床上安静です。
何かあれば、声をかけるようにしてください。」
殿下の手首に触れながら、脈の計測をする。脈は落ち着いているし、まだ顔面は青白いが、落ち着いているように見える。
今回は、これで終了だ。
だか、あと数時間。完全に毒が抜けるまで、気は抜けないな。
ベッドの側から下り、薬歴を開く。
あとは、これを記入して終わりだ。
「ヴィンセント」
「室長。」
「お疲れさん。」
「はい。」
「まだ終わっちゃいないが、良くやったよ。」
「ありがとう、ございます。」
「ついでと言っちゃなんだが、もう一つだけ頼まれてくれないか?」
「え?」