仙台観光

虎杖悠仁の復帰と加えて、呪術高専恒例の京都姉妹校交流会が、開催される。
この時期になると、繁忙期を抜けようやく我々の仕事も落ち着き始めた。

先日も、京都から学長と生徒数名がこちらまで打ち合わせに来たことで、今までとは違った意味で、高専内が騒がしくなり始めていた。

そして、生徒が交流会に参加している間は、我々補助監督の仕事もだいぶ落ち着くため、たまった有休を一気に消化するには絶好のチャンスということだ。


硝子の元に、コーヒーを飲みに立ち寄ったときにその話をすると、暇なのかと呆れられたが、あぁ暇だを返せば、ため息をつかれた。

「で、明日からどこに行くって?」
「仙台。
交流会の間、生徒は外には出ないから伊地知さんに丸投げして遊んでくる。」
「へー、お土産期待してるから」
「任せろ」
「悟には言ったのか?」
「え、言ってないけど」
「あ、そ。」

本日最後の仕事を終え、明日から休み明後日からは杜の都仙台だ。ずんだシェイク楽しみ。仙台帰ったら友達とご飯に行って、飲み明かそうと約束も取得済み。


そんな、私の予定とは裏腹に早朝から始まった交流会。大体1日目は団体戦だ。大昔、どっかの馬鹿野郎に引っ張られて参加したものだ。

学生ってのは、大変だねぇなんて思いながら、意気揚々とパッキングを済ませ、寮の窓からふと東の空を見れば、なぜか会場と思われる場所に帳がおろされようとしていた。

…え、交流会って帳を下ろすようになったんだっけ。

どことなく違和感を感じて硝子の元に向かえば、硝子も何かを感じ取ったらしく、五条に連絡を入れたらしい。

どうやら天元様の結界が破られ、呪霊が侵入した可能性があるとのことらしい。ではあの結界は、呪霊がはったのか。遠すぎて詳細はわからないが、どうも嫌な予感がする。

まっ、でも今日はここに両校学長と引率の教師もいるわけだし、心配はいらないだろう。仕事も少ないわけで、いつもより呪術師の人数は多いはずだ。

そうたかを括って、せっかく来たんだからコーヒーでも飲んでいくかと、いつもの場所から勝手にドリッパーとフィルターをマグカップを出し、お湯が沸くのをまつ。


「衣織」
「んー」

硝子は窓側でプカプカタバコを吸いながら、クイッとアゴであの帳を指す。

「あの帳、どう思う」
「ここからじゃ何とも。ただ、面倒くさいことは明らかだね。」
「まったく」

勝手にとって勝手に入れたコーヒーが出来上がり、1つは硝子のデスクに置くと、いつの間にか電話をしていた硝子は、手を上げて小さく礼を口にする。
それに笑顔を返す。ソファに腰を下ろしさあ、飲もうと、カップに口をつけようとした瞬間、部屋のドアが勢いよく開いた。

そして入ってきたのは…「あー、いたいた。硝子、サンキュー」


何がサンキューなんだ。とは言わない。
でも、どう考えてもめんどくさい方向に傾きそうなこの空気に、ドアの前に立つアイツをあえて見ないようにして、ゆっくりのコーヒーを飲んだ。

フワッと鼻腔をくすぐるコーヒーの香りに、深くため息をつく。

私は何も見ていない。今は有休、今は有休。
そう心で唱えながら、コーヒーを啜っていると足音が近づいてきて、隣でぴたりと止まった。

「こんなところにいるなんて、サボり?衣織」
「休みなんだからどこにいようと私の勝手でしょ。」
「じゃあ、ちょうどいいね。ちょっと来て」


ヒョイっと手に持ったマグカップを奪われ机に置いくと、五条は口元を緩める。

「いや、だから私今休みなの」
「いいから、ほら行くよ」

グンと体を引っ張られ、立ち上がったと思えば一転した視界。

え?

視界は真っ黒の布が広がり、腰に添えられた手。微かに香る柔軟剤の匂いに、頭が追いついていかない。

「んじゃ、硝子、衣織借りるね」
「おう、持ってけ」

そんな会話が繰り広げられる中、ようやく五条に担がれていることに対しての羞恥心がやってくる。

「ちょ、下ろせ。わかった、行くから」
「んー、でも多分このままのほうが早いんだよね。」

結局初めから聞く気がなかったのか、五条は私を担いだまま走り出した。諦めた私は、必死に彼の背中の服を掴みながらぎゅっと目を瞑った。

そして、数分後下ろされたところは、なんとあの帳の前だった。


「なんかこれ、僕だけ入らないみたいなんだよねー、何とかして」
「えぇ…」

マジかよ…いや、もしかしてこの中に、生徒がいるのかもしれない、特級呪霊と戦っている子もいるかもしれない。なんて私はそんな正義感に溢れた人間ではない。そんなことよりも、私は今日は有休だ、私の有休を奪った罪の方が重い。

速攻であげてやる。それに五条だけが入れない帳なんて、おもしろすぎる。


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