教え子の行方

3年が卒業し、再び担任を持ち始めて、3ヶ月が経とうとしていた。卒業式以降、悠仁はときどき顔を見せに来てくれる。

保健室を借りて、お茶を呑みながら高校での出来事を楽しそうに話してくれる。

陸上は辞めてしまったらしい、そのかわりオカルト研究会に入ったんだと。先輩は2人いて、どちらもいい人で、どうやらそれなりに楽しくやっているらしい。
本当に何よりだ。


しかし、ある日を境にパタリと悠仁はここに来なくなった。事故にあったのか、喧嘩をして怪我でもしたのか。そんな心配をする中で、飛び込んできたニュースは、彼が通う杉沢第三高校屋上破壊のニュースだった。


ニュースは、ヘリコプターから撮られた映像からはじまり、共に流れるナレーションが続く。
映像は屋上が私だから、円形に運んだ床と、階段部の倒壊。このニュースでもちきりだ。
初めてそのニュースが取り上げられた時には、SNSでもいろいろな論争がなされていた。未確認生命体のせいだ、UFOだと囃されており、強ち間違いではないかもしれないことに、笑いそうになった。

現在は倒壊の危険があるため、立ち入り禁止になっている。が、私は今からそこに侵入しようとしている。

夜中の学校に侵入するなんて、そもそも夜中でなくても不法侵入になってしまうのだが、静まり返った校舎を小さなライト一本でまっすぐ進む。屋上への階段を登り切る前に見えてきた夜空。

そこまで大きくない広さの大半を占めている、コンクリートに何かがめり込んだような円痕。その破壊痕にあったのは微かな残穢。微かに感じた残穢は円の中心に向かって強くなっており、恐らく呪霊と呪術師がぶつかった痕だろう。そして、おかしな事に特級呪物のものまで混ざっている。
特級呪物を巡って呪霊と呪術師がぶつかった。被害はここで収まっていることから、恐らく呪術師側に勝敗があったのだろう。

恐らくこれが、ニュースでは流せない高校屋上破壊の真相だ。

そしてもう一つ。いつもだったら週に2、3度は顔を見せにくる悠仁が、数日前から、突然姿を現さなくなったこと。忙しくてなかなか来れないのなら、それはそれでいい。でももし…私の予想が当たって仕舞えば。

昨今の現象を掛け合わせて考えると、ある一つの仮説が浮かび上がる。
虎杖悠仁が、なんらかの形でこの件に関わっていたとしたら、そして姿を眩ますほどの何かが彼に起こったとしたら。
呪霊に取り憑かれたか、呪術師と何か問題を起こしたか。

どちらにせよ、呪術界で何か都合の悪いことが起こった。そしてその原因が、虎杖悠仁の可能性。

もし本当にそうならば、彼はなんらかの形で呪力を得て、それを使いこなすために東京に連れて行かれたか。はたまた極秘の何かが動いているせいか。



そして、数日後。彼が、転校したことを知った。
その行き先は東京の山奥。我が母校でもある呪術高等専門学校。
通称呪術高専。

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