初任務

中野駅に着くと、すぐに例の3人組が目に入った。
歩道に寄せると、3人もこちらに気づいたようで、走ってこちらに向かってくる。

「お願いしまーす」なんて、乗り込んできた一年生の1人悠仁は、私の顔を見て目を丸くした。
ガヤガヤと車に乗り込んできた一年生たちは、制服の所々が汚れている。そう言えば今日の任務は、仮倉庫に取り憑いた呪霊の浄化だったはずだ。

少し手こずったのかな?

「衣織先生!?」
「久しぶりだね、悠仁。はい、出発しまーす。」

エンジンをかけて、車を発進させる。

「え、なんで?何で東京にいるの!?」
「色々あって、今は補助監督として高専にいるのよ」
「え、じゃあ先生も呪術師?」
「あー、うん、まぁ…」

真ん中に座った悠仁が、運転席と助手席の背もたれに手をかけ、前の体をのり出して話す。

後の2人は、興味なさそうに外を見つめているのと、どことなく話に混ざりたそうにしながらも、恥ずかしいのかうまく混ざれないのが1人。

確か彼女の名前は…

「任務、どうだった?」
「うん、うまく行ったよ」
「釘崎さんは、任務どうだった?」

バックミラー越しに話を振ると、どこか気まずそうに「余裕でした」とだけ返してくれた。
「そっか!」

その姿に、やっぱり高校生なんだよなぁ。と思い小さく笑った。
綺麗に染められた髪と、綺麗に手入れされた爪を見て、やっぱり女の子っていいよね、なんてババくさいことを考えてしまった。

彼らを高専まで送り届け、車を車庫に戻す。
今日は確か彼らの送迎が最後だったはずだ。

車を返し、鍵をいじりながら補助監督室に戻ろうとした矢先、再びスマホが震えた。それは仕事用のものではなく、プライベート用で、画面には見たことのない番号が表示されていた。

え、誰?

東京に知り合いはいないし、宮城にもこの時期に電話をかけてくるほど仲のいい子はいないはず。友人はほとんど東京にいて、番号も把握済みなのだから。

無視をしようと思ったけど、一度着信が止まって、再びなら出すものだから、恐る恐る通話ボタンをスライドさせ、スマホを耳にあてる。


「もしもし」
『あ、出た。』
「…え?…五条、…先生」
『え、ちょっと今のもう一回言ってみて、グッときた』
^ ^
こいつは何を言ってるんだ。
あんたの性癖に付き合っている暇はない。

「…で、要件は」
『これ、僕の番号だから、登録しといてね。
衣織だけ特別にいつでも通話オッケーだから。』
「いや、番号なら知ってるし」
『それは仕事用でしょ、これはプライベート用だから。』

スマホの奥から聞こえてきた陽気な声と、現状を理解するまで少しだけ時間が必要だった。

声の主が、五条悟であると気づいた時、何でこいつが私の番号を知っているのかと、浮かんだ疑問。


「どうしてこの番号知ってるの?」
『松祭2本で買った』

…硝子か。

それにしても友人の個人情報を、日本酒2本とは少し安すぎやしないか?

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