希望

先生の教え

「先生!
僕は、洋行したいです」
「なぜ?」
「皆や先生に外国がどういうものなのかを教えてあげたい。本の中の中でのことではなく、生きた学問を学びたいのです。」
「…生きた世界…」
「はい!」



まだ幼き少年が、そんな夢を語った時、私の頭の中に浮かんだのは、萩にいた頃に持ち上がった江戸行きの話。

そして、吉田が発した言葉だった。


「ならば、それを叶えるために君は何をしますか?」
「外国の言葉を学びます。」
「どうやって?」
「え、っ…。」

口ごもる少年を見つめる。

「君は一番大切なものを見つけ出せてはいませんね。」




自分が成したい事を語った時、先生は、何事にも理由を問うた。

何故、何故、何故、と。


それに一回で答えられるものはなかなかいなかった。久坂でさえ、答えられなかったことだ。



だけど、その問いは、我らにとっては、いわば道を照らす光のようなものなのだった。


考えて考えて考えて。そして、その問いに答えられるようになった時、自分のやりたいことが、方法が、自ずと見えているのだ。



先生は、塾生に決して教えようとはしなかった。全て自分で考えさせそして答えを導き出す術を、無意識のうちに身につけさせていたのだ。


だから、今自分がその立場になって、さらにあの人の凄さが、身にしみてわかる。


だから、それと同時に私の生きる意味はここにあるのだと確信している。

命をかけて時代を動かした先生や久坂や高杉を始めとする旧友たち。
私はそれを伝えていかなければならない。
先生の考え方やこれからの日本のあり方というものを、これから生きる時代を光たちに。



「幸いにも、私の友人にエゲレス語を話せる方がおります。その方に文を書いておきましょう。」
「え?」
「その方はとても厳しい方です。
君は耐えられますか?」
「は、はい!」


希望に満ちた表情だ。汚れのない純粋な気持ち。まっすぐ前しか向いていないその目。それは、昔あの狭い塾で論を交わしていた旧友たちの表情に重なるものがある。


「先生!ありがとうございます!」


そう頭を下げた彼に、ゆっくりと微笑んだのだ。



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