須佐之男命
死神に与えられた権利として、現世と尸魂界の行き来きすることができる。
自分が望んだ場所にいけるのだが、自分が望まない時代、場所にやってきたのは初めてだ。




「いやー、参ったなこれは。」


ぼんやりと、轟々と音を立てて燃える集落を見つめながら、頭を掻いた。


地獄蝶に導かれ、現世にやってきたはいいが、私が目的としていた場所は、空座町だったのだが、地獄蝶が間違ったのか、はたまた別の力が働いたのか、着いたのは見たこともない過疎の進んだ小さな村だった。

まるで流魂街のような木造建築が軒を連ね、行き交い人々は和服だ。
それはまるで、現世で見た時代劇のような光景だった。



まぁ、今現在村の跡地になりかけているようなものだが。
火の中から逃げ惑う人の声はない。おそらく村人は、みんな逃げた後なのだろう。



飛んできた火の粉を手で払いなが、火の中に足を向ける。
ギシギシと家屋が倒れていく光景を眺めなていると、燃え盛る炎の奥に微かに人影が見えたような気がした。

炎の熱のせいで、蜃気楼でも見えたのか、はたまた本当に逃げ遅れた人がいるのか、ここからでは確認することすらままならない。



目を凝らして、炎の奥の人影を必死に探すと、一瞬の隙間に人影が見えた。その瞬間、走り出していた。







「で、そんなに真っ黒になったわけね。」
「いや、まさかあそこで柱が折れるなんて思いもしなかったよ。」
「まったく。
僕がいなかったらどうなっていたか。」
「いやー、本当にかたじけない。」


頬をぽりぽりかきながら項垂れれば、薫は私と目の前に横たわる少年を交互に見た後はぁーと深いため息をつき、目を細めて私を睨んだ。



「宗兵衛!」
「ん?」


薫の説教を割いてしんと静かな夜に響いた声に、私と薫は辺りを警戒し、ゆっくりと立ち上がった。


「宗兵衛ー!!」


そうべえ?

女性の悲哀に満ちた叫び声に、私と薫は顔を見合わせた。


「あの人、こいつを探してるんじゃないの?」
「あり得る、薫ちょっと聞いてきてよ。」
「なんで僕が行かなきゃならないのさ。だいたいこれは時和が勝手にやったことだろ?」

責任はお前にあると、言わんばかりに目を細めた彼に、全く誰に似たんだ、とため息をつくと、「ちょっと行ってくるわ。」と、ひらひら手を振る薫に見送られ、先ほどから辺りを探している女性を呼び止めた。



「先ほど、日の中から少年を を助けたのですが、あなたの探している宗兵衛君ではないですか?顔を確認していただきたいのですが。」

「は、はい。」


女性は、歓喜に満ちたような、不安げな表情を浮かべて、胸の前でぎゅっと手を握りしめた。
そして、恐る恐る頷くと私の後について歩き出した。





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