後悔
桂は、取り乱すでもなく京で起きた顛末を聞き終えていた。
ほぅ、と桂さんがため息を吐く。


「多くの血が流れてしまった」


誰の姿もその目に入れず、視線を泳がすままそう呟いた。

「こうなると予想していたのに、止める事ができなかった。」
「その思いは皆も同じです。
が、済んだことを今更どうのこうの言っても始りません。」


顔を歪め、手を握り締めている私を見て桂さんは消え入りそうな声で、すまない、と目を閉じた。



「今しなければならんのは、これ以上無駄な血を流させないためには、どう動くか考える事だ」
「はい。」



桂さんは坂本に向き直った。

「今回の件で、薩摩嫌いが助長するのは必至」

薩摩と長州の和解を推し進めたい坂本にとって、同盟への足掛かりがなくなる要因ともなる。


「薩長で和議を行う方向で僕も晋作も動いてはいるが、毛利公の説得と、保守派排除に時間が掛かっているのは確かだ。だからと言って足を止めるつもりはない」

「藩政の転換を計ると言うがか?」

「同盟の話しがなくとも、倒幕を掲げる以上必要な事だからね」
「藩論を討幕へと纏めるにしても、まずは眼前に置かれた厄介事を片付けなくちゃあならん。そこでだ。」


桂さんが坂本へと身を乗り出した。


「薩摩と長州の同盟締結に、再度動いてもらいたい」
「そのつもりでおるき、安心しとおせ」
「だが、今の状況で同盟を急いでも、上手く行くとは思えない」


武市の意見は尤もっともだと思う。


「容易でないと百も承知している。

だからこそ、下からの根回しが重要なんだ。官僚ばかりで話しを進めて手を結べたとしても、我々の真意が伝わらなければ皆は納得しない」


桂さんの言葉に強さが戻っている。

「俺も尽力致す事を約束します」


「頼りにしているよ」








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