漣の群青を捕える
学校の正面玄関を入ると、ガラス張りのケースに優勝旗やトロフィー、表彰状がずらりと並んだ棚がある。
それらに混ざって一枚の写真が目に入った。ガラスのフォトフレームに収められたその写真に写っているのは白い生地に梟谷と胸元に記されたユニフォームを着た男子。体育館の雰囲気や黄色と青のボールから見て、恐らくバレー部の写真だ。
特別バレー部に興味があったわけでもないし、見たくてここに来たわけではなかったけど、ふと目に入った友人の姿。
真ん中の人とは正反対に、相変わらず眠そうにして端っこに立って、みんな笑顔なのに彼だけが真顔で写真に写っている。
そしてそれが、去年の地区大会の優勝した時の写真だっていうもんだから、つい笑ってしまう。
「町田」
「…赤葦」
「何見てるの?」
「これ、バレー部でしょ?」
そう言って写真を指差すと「あぁ」と苦笑いを浮かべた。
「この人が、木兎さんでしょ?」
トロフィーを掲げ、誰よりも目立っている灰色を髪の男子は、最近体育館で見た先輩だ。
「…うん」
「すごいスパイク打ってた先輩だよね。木兎さんのスパイクってさ、なんかスッとするよね。」
なんでだろう。そう呟きながら、ぼんやりと写真を見つめた。
「いつ見たの?」
「この間、休み時間に三年生がバレーやっててさ、その時にね。素人相手に本気なんだもん。」
俺最強ー!ヘイヘイヘーイ!とスパイクが決まるたびに雄叫びをあげる木兎さんを思い出す。高3になって、あそこまで純粋に喜べるのってすごいことだよね。というか、素人相手に手加減しないってところもなかなかだと思う。
「今度バレー部の練習見に来てよ。」
「え?」
「今週末、練習試合なんだ」
「へー、赤葦出るの?」
「うん、まぁ」
「んー、気が向いたら」
「絶対こないやつだろ、それ」
「…全く信用されてないんですけど」
ムッとしながら赤葦を見上げると、相変わらずの無表情で私を見下ろしていた。
「よし分かった!インターハイを見に行く!」
「え?」
「見に行くからには、負けるとかレギュラー落ちとかやめてよね」
「誰に言ってるの。」
フッと嘲笑うかのように、微笑んだ赤葦は、「そろそろ次の授業始まるよ」と歩き出した。
「あ、待ってよ」
「次、何だっけ?」
「英語」
「俺、英語あんまり好きじゃないんだよな」
「私が教えてあげよう」
「できないってわけではない」
「うん、知ってた。」