さすがに今日はやってねーだろ、なんて話していた俺たちの予想を反して、体育館の窓はカーテンが閉められ、開け放たれたドアからは、ボールの弾む音と、何人かの声が聞こえてくる。
「おいおい、今日は休めって言ったのに。」
「ったく、バレーバカばっかかよ」
「そういうお前もバカだろ」
「黒尾もな。」
にこやかに微笑む海に、苦笑いを浮かべかながら、バスから荷物を取り出し、体育館のドアを開けると、居残り組の部員の姿。それと…
「リエーフ、スパイカーにいちいち反応すんなって!
ボール見てブロックでしょ!リードブロック!」
「はい!」
「チャンスボール!」
「ナイスブロック!さすがー」
「ウェーイ!」
「ウェーっと、うわっ。
ちょ、ハイタッチ手加減してよ」
「あ、すんません!
ウェーイ!」
「ウェーイ!」
リエーフのハイタッチに力強く答えた彼女は、嬉しそうに微笑み、リエーフを呼んでこそこそ何か話している。それを真剣な表情で頷いている。
「あれ、椎名も来てたのか。」
「みたいだな。」
「リエーフのレシーブが様になっている、だとぉ!?」
大げさに驚く山本の声が相変わらデカいで、数人の一年が俺たちに気づき一旦練習をやめて集まってくる。
「先輩、お疲れ様です!」
「おー、お前ら今日は休めって言っただろ。」
「はっ!す、すいませんなんか家にいると、いてもたってもいられなくて、つい。」
「っす。」
「まぁ、いいけど?怪我とかすんなよ」
「アス!」
一番初めに来た一年が再び練習に戻っていき、すぐにリエーフが飛びかかるようにやってくる。
「俺、だいぶレシーブ上手くなったっすよ!」
「ほう。なら俺が見てやろう。」
隣に並んだ夜久が、肩にかけたバッグを床に置き、ニヤリと笑う。
「え…」
「熱心だねぇ。」
リエーフが、夜久に引きずられていった後、残った緋色にニヤリと笑う。
「帰りにアイスでも買ってもらおうか。」
「はいはい」
「どうだった?宮城」
「なかなか面白かったよ」
「ほーう。」
「ビブス、綺麗に畳んである」
「心なしか部室が綺麗?」
「というか、なんか空気が違う!!」
「山本るせー」