やってきた夏合宿

朝7時。
なんだこの時間。いじめか、そうかいじめだな。
太陽さえも起きたばかりの朝に、赤いジャージを着た集団に混ざって、私は覚醒していないアタマをゆらゆら揺らしながら、ぼんやりと直井さんの話を聞いていた。


無事に期末考査も終わり、夏休みに入って3日目。
それは、足早に…いや、もはやダッシュでやってきた。
合宿1週間前、黒尾に言われた集合時間は、なんと朝7時。
そこから、バスで今回の遠征先に向かう、今回は近場らしいくいつもよりは遅めの出発らしい。


今回の遠征メンバーは、恒例の梟谷グループ他と宮城の高校が参加しての4校で行うらしい。


わざわざ宮城から来るなんてすごい。
そんなことを考えいたものだから、詳細に関しては聞いてはいたが、もはや頭にとどまってはいない。



「あ、あの…も、もしや今年も椎名さんがマネージャーやってくれるんすか。」


恐る恐る私に近づいてきたモヒカン頭。何故か既にうぅ…と泣きそうになっている彼に、「そうだよ。」と頷くと「じょっ、じょっ、女子マネダー!…。」と校舎に向かって叫んだ。
まぁすぐに「山本うるせー!」と黒尾の怒号が飛ぶ。


何なんだ、こいつら。
朝から元気すぎる。

ぼーっとしているのは、私と、孤爪くんと海くらいだろうか。あ、あと福永くんもぼーっとしてる。

あとは、既にギラギラしてるアホの方が多い。そんなギラギラの渦に入る勇気もなく、少し離れた場所でバスの順番を待つ。さっさと乗ってほしい。そして、私は寝たい。




「椎名」

くわっとあくびを噛み殺しながら、みんながぞろぞろとバスに乗り込んで姿を眺めていると、相変わらず音もなくスッと黒尾がとなりに現れる。


「何かね、主将。」
「悪いな。」
「謝るなら、はじめっから誘うな。」
「それもそうだな。
よろしく頼むよ、マネージャー。」
「臨時マネージャーですよ、主将。」



斜め上を見てにやりと笑うと、黒尾も相変わらずニヤリと笑みを浮かべた。


「えー、私黒尾のとなり?」
「んだよ、文句あるんデスカ?ん?」
「大アリだ。黒尾でかいからきついじゃん!」
「……。」


既に、通路を挟んで隣に乗っていたやっくんが、ぶはっと吹き出し、横の海は微笑んでいる。

「海のとなりがいい。」


キョロキョロとバスの中を見渡せば、「ここ。」と手を挙げた海の隣には、すでに夜久くんが座っていて、眠る準備まで始めている。


だめだこれは。そう悟った私は、無言で黒尾の隣に腰を下ろす。

あぁ、しょうがない。
黒尾のとなりで我慢するか。



「海にフラれたか?」

既に座ってスマホをいじっていた黒尾は、顔を上げてにやりと笑った。

「うるさい」と言いつつバッグからSPSを取り出すし、イヤホンを差し込む。
「酔うなよ。」
「酔わない」
「酔うぞ」
「酔わない」

その言葉に、私は無言でSPSをバッグに戻した。その一連の行動を隣で見ていた黒尾は、やっぱりあの笑顔で笑うのだ。


mae tsugi




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