ふらっときて、邪魔にならないように隅っこでバレーを眺めていると、私に気づいた黒尾が、ニヤリと笑ってこっちに近づいてくる。
「やる気は十分じゃねーの。」
「やるからには、ちょっとは使い物にしないと」
「さすが、緋色だな」
爽やかに海は微笑む。
その隣でニヤリと笑い、ボールを片手にTシャツで汗をぬぐう黒尾に、持っていたハンドタオルを差し出す。
「んぉ、サンキュ」
広げてガシガシと顔の汗を拭ったハンドタオルを、ポケットにしまった黒尾に目を丸くする。
「いや、返してよ」
「洗って返す」
「いいよ、別に」
「ダメだろ、普通」
頑なに運とは言わない黒尾に、諦めてコートに視線を移す。
「…あの子素人?」
「あ?」
「夜久に怒鳴られてる子」
「あー、リエーフか」
「リエーフ?」
「おう、灰羽リエーフ
遠征中、あいつのこと置いてくから、頼むぞ」
「えー、マジっすか
思ったより下手くそなんですけど」
「まぁ、そう言うなって」
アンダーサーブさえもまともに打てなくて、スパイクでさえ時々空を切る。オーバーは、それ反則とられない?と心配になるほど。
思ったよりもひどい奴を預けられるんだなと、今になって若干後悔している。
「バレーやってるように見えるように、頑張る」
「おー、期待してる」