村人Bの話
日向達が帰った後、私たちも少し勉強しようかという話になって、参考書を眺めていると、ピンポンと軽快なチャイムが鳴り響いた。
「誰だろ…」不思議そうに席を立つ仁花が、少し心配で後を追って廊下に出ると、すぐに戻って来た仁花が、日向が忘れ物をしたらしいと、教えてくれた。
「何忘れたの?」
「国語の教科書だって。」
「あー、これかな?」
机の下に潜っていた一冊の本。
下の部分がしおしおになった教科書だ。私ではない、絶対。仁花もこんな扱いはしないだろうから、絶対これだ。
「あ、ホントだ、名前書いてある」
デカデカと枠いっぱいに書かれた名前に、日向らしさを感じながら、玄関に向かった仁花を追って立ち上がり静かに、部屋のドアを開けた。
「そんなことで入部しようか迷ってんの?」
うわ、今の一撃はきつい!
効果は抜群だ!ヒトカはたおれた!
「とりあえず俺は、影山の後頭部にサーブぶつけたり、田中さんの股間にゲロ吐いたり、教頭のズラ吹っ飛ばしたけど、今も無事にバレーやってるよ!」
「それほんとに無事だったんです?」
それ絶対無事じゃないやつ!
思いのほか具体的に語るもんだから、思わず吹き出しそうになった。想像しただけで面白い、このネタで3日は生きていける。
口を押さえて、必死に笑いをこらえていると、「言いに行こう!」という日向の声にハッとして思わず扉を開けた。
「衣織!」
「町田さん!?」
「日向、引きずってでも連れて行け!」
ニッと笑う。こういうのは勢いだ!その人を目の前にすれば、少しだけ勇気を振り絞ればきっと大丈夫。
多分私だと、仁花はきっと甘えてしまう。だけど、日向なら背中を押すことができるような気がする。
「ほら、仁花靴を履いて!」
「え?え!えぇ!?」展開について行けていない仁花に、無理矢理靴を履かせ、ドアを開けて日向共々押し出した。驚く日向にニッと笑う。
「日向頼むぞ!」
「お、おうよ!」
「仁花、ちゃんと言ってこい。帰ったら、夕ご飯の買い物行こう!」
そう言って笑うと、日向は仁花の手を掴んで走り出す。私もその肩をポンと押した。
きっと大丈夫だよ。そう心で呟きながら。