幼馴染の勘
「ここ、5組だから」
歩みを止まりそれと同時にスルッと抜けた手にハッとして、彼が去る前にと慌てて声をかけた。
「本当に助かりました、ありがとうございました。…あ、名前!あのクラスも。教えてください。」
「…4組…つきしま、けい」
つきしまけい。どんな字を書くのだろうか。そう思いながら、もう一度名前を心の中で復唱した。忘れないように。
「月島くん、本当にありがとう。」
そう言って教室に入る。おそらくすぐに机がある。何となくシルエットはわかるから、それを頼りに自分の机にたどり着くことができた。
それから数日後のお昼休み。卵焼きをつつきながら、チラッと仁花を見る。
「仁花」
「ん?」
「4組のつきしまけいって知ってる?」
「月島?バレー部の?」
「あー、多分…。」
「…月島くんと何かあったの?」
「この間のコンタクト落とした時、月島くんに教室まで連れてきてもらった。」
「え!?」
「…ん?」
明らかに反応が大袈裟な仁花に視線を向ければ、目を丸くして何やら敬称し難い顔をしていた。
驚いているような嬉しそうな、だけどそれを我慢しているような。
「そ、それでそれで?」
「お礼した方が良いかなって思ってさ」
「う、うん!そうだね。」
そう今度は嬉しそうに微笑んだ仁花に、首を傾げた次の日。
仁花は、月島くんはショートケーキが好きなんだって。とどこで仕入れてきたのかそんな情報をくれた。
流石に学校にケーキを持ってくるのは難しかったから、帰り道にチョコレートを買って渡すことにした。
「あのー…月島くんていますか?」
教室に入り口にいた長身の男の子に声をかけると、「ツッキー?…ツッキーは…いないみたい、」
困ったようにほほえむそばかすくんに、無言で頭を振る。
「そうですか、…あのー頼みごとしていい?」
「え?…俺?」
「うん、…これを月島くんに渡して欲しいんだけど。」
そう言って昨日買った紙袋を差し出した。人伝いに渡すの失礼かなあと思いながらも、もう一回くるのも面倒だしなという気持ちが勝ってしまった。
「あ、あぁ、うんいいよ。」
「ごめん、ありがとう。それと、昨日はありがとうございましたって伝えてください、多分言えばわかると思うので。」
「うん、わかった。」
穏やかに微笑む彼にペコっと頭を下げると4組を後にした。