君の隣
それから、再び静寂が訪れすぐに変えるだろうと思っていた月島くんは、驚くことに教科書を開き今日の復習を始めた。
「何。」
「いや、別に…」
「ふーん。」
驚いて月島くんを見つめていると、視線に気づいたのか、不機嫌そうな顔で睨まれた。
慌てて誤魔化したけど、内心焦りまくり。本当にここでやる気?今日部活は?
教科書を読みたいんだよ、読みたいの!でもね、そんなことが頭に浮かんできて、全く内容が入ってこないんだなこれが!
なんて、最初は焦りやら驚きやらで混乱していたけど、時間が経つにつれて、お互い集中し始めて、いつの間にか隣が気にならなくなっていた。
一通りの復習と明日の予習を終わらせ、ふと顔を上げ両手を上げて、体を伸ばすと、目の前の窓の外はぼんやりと暗くなり始めていた。
うわー、結構集中してたんだな。首をコキコキ鳴らしていると、ふと隣に気配を感じて視線を落とすと、机に突っ伏して眠るふわふわとした黄色い頭があった。
…え!月島くん?
力尽きたのか、ヘッドホンをして外の音をシャットアウトした彼は、先程から動かないが、背中がゆっくり上下しかすかに呼吸音が聞こえてくる。
どうやら寝ているらしい。
明日から東京だってのに、早く帰ればいいのに。と思いながらも、ここに放置して行くわけにもいかずに、仕方なく起こすことにした。
「月島くん、起きてよ。帰るよ。」
ポンポンと肩を叩けば、「ん。」とかすかに声が漏れる。
「おーい、もう夕方だよー。早く帰んないと明日起きれないよー。」
ダメだ。全く起きる気配がない。部活やらテスト勉強で疲れているんだろうけど、ここで寝られても困る。なんとしても起こさなければ。
この際だからと、声をかけながら肩を揺すれば、むくっと月島くんが上半身を起こし、ヘッドオンを耳から外した。それから数秒後、ぼんやりと前を向いていたかと思えば、メガネをかけてチラッと私をみて目を丸くした。
「…町田さん?」
「うん。」
「…ごめん、いつの間にか寝てた。」
少し恥ずかしそうにあくびをかみ殺すと、眠そうなか表情をしながらも教科書を片付け始めた。
「町田さん、家どこ。」
「西区の方、だけど…」
「そう」
それだけ言うと、黙々とバッグの中に教科書類を詰め込んだ彼は、それを肩にかけて立ち上がった。
「何してるの、帰るよ」
「え?あ、あぁうん。」
慌てて教科書をカバンを詰め込み、自習室を先に出て行った月島くんを追いかけた。
「ごめん、送ってもらっちゃって」
明日から東京なのに。
「別に平気だから」
「怪我には気をつけてね」
「え?う、うん。」
「じゃ、ありがとう。おやすみなさい!」
少し驚いている月島くんに手を振ると、玄関の扉を開けた。