ベイss



じいちゃんは試合、タカオは委員会で、マックス君とレイ君はキョウジュの家。
学校帰りに従弟の家へ寄るのが日課だった私は、彼らの予定をすっかり失念していた。
けれど、じゃあ引き返すかというのもできそうにない。
「・・・」
「・・・」
同じく、彼らのチームメイトであるカイ君が先にいたからだった。
「木ノ宮たちは」
「タカオは学校でみんなはキョウジュの家。タカオなら、もうすぐ来ると思うけど」
そうか、と彼はそっけなく返事をする。
「(い、いたたまれない・・・)」
とりあえずふたり分のお茶を用意して彼の前に出した。
「ごゆっくり・・・?」
そう言うと、なぜだか呆れたようなまなざしを向けられる。
どうしよう、なにかしたかな。
気まずい空気が流れる中、彼は「ありがとう」と言って静かにお茶に口を付けた。
綺麗な所作を眺めながら思う。
大ざっぱな性格の従弟が、物静かで真面目そうなカイ君と仲が良いのはなんでだろう。
マックス君やレイ君だって同じだ。
ベイブレードという共通点がなければ、彼らは今みたいに友達になれるのだろうか。
すると、
「そんなに見るな」
とぼそりとカイ君が呟く。
「えっ。あ、ご、ごめんね」
「別に。面白いものでもないだろう」
「ぼんやりして・・・それに、綺麗だったから」
「は?」
ああもう、自分で墓穴を掘ってしまった。
「ごめん・・・」
はあ、と彼はため息をつく。
「お前は、木ノ宮とはあまり似てないな」
「え?」
「あいつは騒がしいが、お前は静かだ」
そりゃあタカオと比べたら、そう考えて思わず笑みがこぼれる。
「?なんだ」
「ううん。タカオは小さい時から元気だからね」
ふうん、とカイ君はうなずく。
「お前は?」
「え?」
「どうせなら木ノ宮よりも、目の前にいるなまえのことが知りたい」
そう言って真紅の瞳が私を映す。
うっすらと彼が微笑んでいるのに気づいてしまい、それがレアな光景であることを知る。
どうしよう。
タカオたちが帰って来るまで、私の心臓もたないかも。


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