空の青より海の青
手、つなぎたい。
帰り道、勇気を出してそう口にすれば、
「いいよ」
とあっさり返事をしてハルは手を握ってくる。
並んで歩く帰り道、ふたりの影はずいぶん長くなってしまっている。
かげかえのない夏の終わりが、もうすぐそこまで来ていた。
少しだけ目を上げて横顔を見つめる。
いつもと同じ表情のまま、まっすぐ前を向いて歩いている。
「・・・なに」
「ううん。別に」
もしかして、私だけがこんなに緊張しているのかな。
「(何を話したらいいんだろう・・・)」
部活のこと、授業のこと、たくさんあるはずなのにどうしてか出てこない。
「アパート、」
「え?」
「引っ越すだろ。来年になったら」
「・・・うん」
同じ家に住む従弟より一歳上の私は、卒業したら県外の大学に進学する。
しんみりした気持ちでいると、
「帰ったらごはん俺が作るから」
といつものトーンで返ってきた。
「サバ?」
「いやか?」
「いいけど、昨日もだったよ」
そう答えれば少しだけ唇が尖る。
「ねえ、凛ちゃん元気かな」
「多分」
「連絡取ってる?」
「時々は」
「そっか。・・・ねえ」
従弟なのに好きになるってやっぱり変かな。
そう聞いた声が少しだけ震えた。
遥の足が立ち止まる。
「・・・なに、突然」
「ごめん、なんでもない。やっぱり今のな、」
し、そう言おうとした瞬間、唇が重なる。
「・・・ハル」
「なまえ」
ちゃんと好きだから、と彼は言った。
「ここ外だよ・・・」
「いい。別に、もう家の前だから」
玄関の戸を閉めた瞬間、強く抱きしめられる。
「俺は、なまえだから好きになった。従姉でもそうじゃなくても、なまえじゃなかったら好きにはならない」
そっか、と呟く。
プールの匂い、夏の匂い。ハルの匂い。
未来なんて誰にも分らないけれど、ずっと一緒にいたい。
なんだか泣きたくなって、そっと彼の背に腕を回した。
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