ヒプマイss



十四にピアスを開けてもらう話

あのね、と私は切り出した。
「なんスか?なまえさん」
「実は、ちょっと十四くんにお願いがあるんだけど・・・」
私の言葉にぴく、と彼は反応する。
「自分にできることならもちろんなんでもやるっスよ!」
「ありがとう。あのね、実はピアス開けたいんだけど、自分じゃ勇気が出なくて。お願いしてもいいかな?」
ピアス、と彼は呟く。
「え、え、それって、もしかして俺がなまえさんの穴開けるってことっスか・・・?」
「うん。十四くんいっぱい開けてるし、上手そうだから・・・」
「おおお・・・もちろんいいッスよ、おそろい付けましょ!てか、なんかそれって背徳的な感じっスね・・・!」
背徳的って。
「じゃあお願いします」
「任せてくださいっスー!」
***
ピアッサーを持つ十四くんの手が震えている。
大丈夫なのか本当に、と思わずこっちが不安になってしまう。
「そろそろ感覚なくなったかも」
「!ほんとスか」
よし、じゃあいきますよ、と十四くんはピアッサーをかまえる。
「う・・・私、耳弱くて・・・」
「そう、なんスか」
「うん、だから、その」
痛くしないでね、と緊張しながら呟く。こんなこと十四くんに言ってもしょうがないんだけど。
沈黙の中、いきますよ、と彼の指がそっと耳たぶに触れた。
「!」
「大丈夫っスよ。落ち着いて」
ぎゅっと目をつぶり、今か今かとその瞬間を待つ。
あ、なんか固いものが触って、
「いきますよ、」
パチンッ。
「!う、」
「終わったっス、いい子で我慢できましたね」
張りつめていた呼吸がこぼれる。
「こわかった〜・・・!」
「大丈夫、大丈夫。あとは化膿しないようにケアすれば、1か月くらいで好きなの付けられるようになるんで」
もう少しの辛抱スね、と彼は笑う。
「ありがとう、十四くん」
「いえいえ。ピアス、プレゼントさせて下さいね」
「え、そんな。悪いよ、開けてもらったのにそこまで」
「遠慮しないで、俺がプレゼントしたいんスよ!それに・・・その」
なんかこんなこと言うのヘンタイぽんですけど、と前置きして、
「我慢してる時のなまえさん、可愛かったっス」
「え、ええー・・・」
それは確かにちょっとヘンタイぽいかなあ。
「あ、もしかして引きました?」
「いや、えーと大丈夫」
「やっぱりちょっと引いてるじゃないっスかー!」
「大丈夫だって。おそろい、楽しみだね」
そう言うと彼は「はいっス!」と元気に返事をした。


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