ヤマトくんに甘やかされたい



「ふわあああ・・・かっこいい・・・」
あまりにもかっこよすぎて隠し撮りをしてしまった料理中のヤマトくん。
コーヒーを飲んでいる時のと、勉強中の画像もある。
すっきりと整った凛々しい顔立ち。不意打ちの瞬間でもこんなに格好いいなんて反則だと思う。
ずっと見ていたい、というわけで待ち受け画面確定である。
けれど、密かな楽しみだったはずのそれは、とうとう白日にさらされることになってしまったのだ。

***

電子音が鳴る。
「あ、」
なまえさーん、とヤマトくんが呼ぶ声が聞こえた。
「メッセージ来て、・・・」
「はーい今行く」
そう答えた次の瞬間、ずかずかと足音がしたかと同時にばん!と乱暴に開かれるドア。
「なまえさん!なんすかこの写真!」
「げ」
ばれた。
さーっと青ざめるのが自分でも分かる。
「いつ撮ったんだよこんなの」
「「いや、ちがうの。あんまり格好いいからつい」
しどろもどろの私に彼は「消してください」と迫る。
「えーっやだやだなんで」
「俺がいやだからですよ!肖像権!」
私は必死に頼み込む。
「お願いっ、この1枚だけは見逃して!」
「この1枚って、まさか他にも撮ってるんですか!?」
あ、墓穴掘った。
「あの、はい・・・」
はー、と大きなため息をつくヤマトくん。
そして、
「チェックします」
と宣言をした。
「はい・・・」
リビングに連行され、後ろから抱きかかえられるようにして座る。
「あの、この姿勢は」
「いいから。ほら、早くフォルダ開く」
いつになく命令口調のヤマトくんの声が耳元で響く。
「勘弁してー」
「しません」
早く、と囁かれ、仕方なく秘蔵の3枚を見せた。
「いつの間に撮ったんだ・・・」
「ごめんね。やっぱり隠し撮りはよくないよね」
もったいないけど、寂しいけど消そう。
すると、
「1枚くらいならまあ、別に」
とヤマトくんはぼそりと呟いた。
「え?いいの!?」
「その代わり、待ち受けだけはやめてください」
ちぇ。でもお許しが出たので、一番お気に入りの料理中の写真だけ残しておくことにした。
「ありがとう、ヤマトくん」
「いえ・・・あの」
「ん?」
「いや、やっぱりいいです」
ぎゅ、とごまかすように抱きしめる腕の力が強くなる。
「えー?なに?」
「なんでもない。忘れてくれ」
肩口に鼻先を埋められてしまい、くすぐったくて身をよじる。
まさかヤマトくんが、
「(俺も1枚だけ持ってるんだよなあ・・・)」
と考えていたとは知りもせずに。


- 47 -

*前次#


ページ: