加州清光2
水面に揺れる、五月の光。
紅白をまとった巨大な体が悠然と泳いでいるのをもの珍しげに覗いていた清光は、
「すっごい・・・」
と口にした。
「ねえ、餌やってもいい?」
「うん。さっき向こうで買ってきたから」
彼がひとつかみを差し出した瞬間、彼らは食事を求めて足元に必死にまとわりつく。
「う、うわ」
あわてて手を広げると、一度跳ねた鯉たちはあっという間に食べ尽くしてしまう。
それを数回くり返した後、満足した清光は戻って来た。
「どうだった?」
「すごい勢いなんだもん、びっくりした」
「よっぽどお腹空かしてたんだね」
「にしてもがっつきすぎじゃない?」
そう言って清光は私の腕のすき間にするりと絡む。
「なあに?」
「ね、どうして今日は俺だけを誘ってくれたの?」
そうだなあ、と答えに迷っていると、清光はきらきらした瞳で見つめてくる。
「いつも隊長と近侍を頑張ってくれているから、かな」
「えーそれだけ?」
彼は不満そうに唇をとがらせた。
「それだけって、じゅうぶんな理由なんだけど」
「もっと特別扱いなのかと思ってた。ま、いいけど」
特別なのはみんなだけど、そう言いたいのを我慢する。
今そんな言葉を口にするのは野暮というもの。
代わりに「でも今日だけは特別の特別」と言って歩き出す。
「え・・・え?」
「あっち見に行かない?花がたくさん咲いてるよ」
色とりどりの牡丹や菖蒲を並んで眺めながらとりとめもない話をする。
「花にもさ、いろんな種類があるんだね」
「そうだね。満開の時に来られて良かった」
ふいに清光は「あ!」と声を上げた。
「主、あんみつ!あんみつ食べよ、ねっ」
「いいね、食べよ食べよ!」
***
「なんにしよっかなー」
「さっきあんみつって言ってたじゃん」
「だって全部おいしそうなんだもん。主は?」
「私は絶対フルーツゼリー」
すると清光は「実はそれも迷ってたんだよね」とさらに頭を悩ませた。
「だってココナッツミルクにいろんな味のゼリーが浮かんでるんだよ、絶対おいしいし綺麗じゃんね」
「分かるー!あーどうしよ、マジで迷う・・・いや、男に二言はない!」
そうして注文を済ませたあと、私は携帯を取り出して写真を眺める。
「いつ撮ったの?見して見して」
「いいよ、ねえこの写真、超うまく撮れたんだよ」
どれ?と覗きこんだ清光の顔がみるみる赤く色づいていく。
「うそ・・・いつの間に撮ったんだよ」
「やっぱりすごい美人だよね。この写真、大事にしよう」
花に顔を近づけ、美しさに感動している清光の自然な表情。
「えー・・・なんか恥ずかしい。でも大事にしてくれんのは嬉しい、けど」
「家宝にする。清光も家宝」
「うそ、それはさすがにおこがましいから無理!」
「ねえ、てかあとで一緒に撮ろうよ」
「えっ、撮る!絶対だよ、約束ね」
もちろん、と私は頷く。
頬を紅潮させ、きらきらと瞳を輝かせている私の大切な刀剣男士。
はーかわいい。眼福。尊さに目がつぶれる。
「俺さ」
「ん?」
「この体があって良かった」
「どして?」
「いろいろ体験できるし。それに、主のために戦えるし。す・・・好きって言えるし」
最後の言葉にきょとんとする。
「ありがとう」
「俺さ、すごい幸せなんだよ」
嬉しそうに目を細めて清光は言った。
「主、大好き」
「えー照れる・・・ありがとう、私も大好きだからね」
あんみつ楽しみ、と彼は笑った。
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