大俱利伽羅は落ち着きたい



大倶利伽羅は落ち着きたい
「あ、」
君もここに来てたんだね、そう言って髭切はふんわりと笑った。
「・・・ああ」
「 一等地だもんねえ。日当たりも最高だし風も気持ちいい」
当たり前のように彼が隣に腰を下ろしたのを見て、大 利伽羅はかすかに顔をしかめた。
「主もよくここに来るみたいだし。いつも誰かいるから今日はついてるねえ」
馴れ合うつもりはないと言って彼は立ち上がる。

「ありゃ、行くの?」
「ああ。あんたがここに座りたいならそうすればいい」
「もしかして気を悪くした?」
「いや。俺はもう十分休んだ」
ここに来てからまだそう時間は経っていなかった ものの、非番の彼にはじゅうぶんな休息だった。
「なら、お言葉に甘えて交代させてもらおうかな」
「ああ」
行き場をなくした彼は居間に場所を移すことにした。
盆の上に運よく茶菓子でもあればいいが、そう思ってふすまを開けた矢先、
「あっ」
包丁と目が合った瞬間、さっと閉める。
しかし、
「なんでそんなことすんだよお!」
と叫んで相手は勢いよく開け放った。
「俺じゃなくてもいいだろ」
「そうだけどお、いいじゃん。どのお菓子が一番おいしいか食べ比べしてるんだけど、なかなか決着がつかなくてさあ」
俺は大福、と不動が手に取りながら言った。
「もちもちしてンのとあんこが口の中で混ざるのがいいんだよな」
「 俺はきんつばだな」
そう言いながら手を伸ばす薬研に、
「いいけど好みが渋いよふたりとも」
と包丁は呆れる。
「・・・そう言うおまえはなにが好きなんだ」
「 俺はねー、んーとアメでしょ、ガムでしょ、それからチョコにー」
もちろん大福もきんつばも好き!と包丁は宣言した ちなみに大倶利伽羅さんは、…あ 黙ったままふすまを閉めると、大倶利伽羅はためいきをついた そして、誰も使っていない空き部屋の戸を開け、今度こそ静けさの中で寝転ぶと目を閉じる がたり … がたん ……、立ち上がった彼は、勢いよく押し入れを開く っ、お前
す…すみません、大倶利伽羅さんっ… 五匹の虎と一緒に隠れていた五虎退は、眉を下げて泣きそうな表情を浮かべている どうでもいいが、虎を抱えて隠れてもすぐに見つかってしまうんじゃないのか そっそうなんです!でも、どうしようもなくて… しょんぼりと俯いてしまった相手を前にして自分の発言を後悔したものの、こうなっては仕方がない 少しの間なら、面倒を見てもかまわないが 本当ですか!? で、ここに来たってわけね ああ。


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