アイナナ書きかけ



「天!」
恋愛するなとは言わない、と楽は言った。
「俺だっていつかちゃんとした相手としたいと思ってる。でも今は大事な時期だ」
「そんなの分かってる」
「分かってない」
ふたりとも、と龍之介が間に入る。
「はあ・・・分かってるよちゃんと。ブラホワが控えてるのも理解してるし、無責任なことは絶対しない。君たちにもなまえにも」
「お前の気持ちはじゅうぶん伝わってるよ。でもまわりが放っておいてはくれないだろう」
「心配しなくてもボクが彼女を守る」
決意を秘めた瞳がふたりを見つめる。
「・・・本気なんだな」
「もちろん。遊びで付き合うように見える?」
天の言葉に楽は「いや。安心したよ」と口元をゆるめた。
それを見て、龍之介はようやくほっとする。
「よ、よかった・・・!」
「?なんだよ」
「ふたりの剣幕がすごかったから殴り合いにけんかになるかと思って」
アイドルがそんなことするはずないでしょ、と呆れたように天は言った。
「あの子、きっと龍にもいろいろ相談してるんでしょ」
「そうなのか?」
未成年のトップアイドルと付き合うことへの不安、彼のキャリア。
天はぽつりと呟く。
「我慢させてることがたくさんあると思う」
「・・・天」
「でも、ボクが我慢できないんだ。彼女を手放すのがこわいだけ・・・もちろんなまえが別れたいと思うならどうしようもないけど」
「そんなこと!なまえちゃんは全然思ってないよ」
そんなことまで話してるのか、という楽の言葉に龍之介は「あ」と口元を押さえる。
「いいよ。悪いけどこれからもあの子の相談役になってあげてくれる?龍」
「もちろんだよ、天」
「だけど、いつ話してるの?ボクだって忙しくてあんまり連絡できないのに」
「時々だよ。天よりも全然少ないんじゃないかな」
ヤキモチか?と楽はからかう。
「うん」
「お、珍しい」
「正直ちょっと妬いてる。でも、龍のことは信頼してるから平気」
「ありがとう。ふたりのこと応援してるよ」
「俺もだ。結婚式には呼べよ」
気が早すぎ、と答える天の顔はこころなしか赤い。


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