コルダss



《薔薇色の日々》

ほーんと、なまえちゃんと付き合えるなんて俺って超ラッキーだよ!
「おまけにー、八木沢部長とも親戚になれるし!」
その言葉に思わず従妹であるなまえと顔を見合わせ、雪広は苦笑を浮かべた。
「新。ちょっと落ち着いて」
「あ、すいません・・・俺、つい嬉しくなっちゃって」
へへへ、と笑顔を見せる新につられて笑顔を見せたなまえだったが、
「でも、ちょっと気が早すぎないかな?」
と言った。
「なんで?」
「なんでって・・・私たちまだ、大人じゃないし」
そっか、と新は考えるそぶりを見せる。
しかし、
「でもいつかはそうなるよ。だって俺、なまえちゃんのことがだーい好きだもん!」
と屈託のない笑顔を見せた。
太陽のような新と一緒にいると、いつの間にか彼のペースになっていく。
それがとても楽しくて心地良い。
そんないつかが本当にくるならいいな、と思えてしまうほどに。
「新がなまえのことを真剣に好きでいてくれるのは、僕もうれしいよ」
でもね、とわずかに顔を赤くした雪広は、
「付き合って3日目でそれはさすがに気が早いんじゃないか?」
と言った。
「そうかなあ」
「お互いのことをよく知って、それからあらためて言葉にするのはどうかな?・・・まあ、僕が口をはさむことではないと思うんだけど」
「いや、八木沢部長のおっしゃるとおりです!」
と新は頭を下げる。
「お義兄さん!これからもよろしくお願いします」
「僕はなまえの従兄なんだけどね・・・」


《太陽の船出》

泣かないで、そう言って新くんは笑う。
「うん」
涙がこぼれそうになるのを必死にこらえて頷く。
けれど、視界が滲んでしまうのを止めることはできない。
「あー俺、やっぱりなまえちゃん残して行きたくない!」
そう叫んで彼はぎゅっと私の背中に腕を回して抱きしめた。
「あ、新くんここ外・・・!」
「関係ないよ。だって俺、なまえちゃんが大好きだもん」
従兄へ目を向ければ、困ったように笑っている。
「新は変わらないね」
寂しくなるな、と雪広は言った。
「部長・・・なまえちゃんのこと、よろしくお願いします」
「それはいいけど、どうすれば?」
「悪い虫が付かないように。なまえちゃん可愛いから」
そんなことないよと言えば「あるある!」と新は反論する。
「そういう鈍いところが不安なの」
「そういうって・・・」
出発を告げるチャイムが鳴る。
「あ、」
行かなくちゃ、と彼は名残惜しそうに呟いた。
胸の奥が苦しくなる。
本当に行ってしまうんだ。
優しい瞳が細められる。
「毎日メールする。電話も」
「うん」
「手紙だって書くよ。今日は何があったって、日記みたいにさ」
「うん・・・」
俺の全部を知っていてほしいから、そう言ってくれる彼が本当に大好きなんだ。
「絶対迎えに来るから。だから・・・ちょっとだけ、待っててくれる?」
「うん。行ってらっしゃい、新」
「・・・行ってきます」
ゲートの向こう側で彼は叫んだ。
「グッバイ!アディオス!テアーモ!」
思わず顔を手で覆う。
「相変わらず情熱的だね・・・」
またね!という大きな声がいつまでも残って離れない。


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