清光はもどかしい



主に想い人がいると知ってから時々、悩みや気持ちを聞くようになった。
こういうのって思いつめてばかりいたらきっと良い方向にはいかないし、仕事にも支障が出るかもしれないから。
「ねえ主、元気出しなよー」
「もう無理・・・絶対呆れられたもん」
たしかに朝食の時間に3時間も遅刻したのにはちょっとびっくりしたけど。
あの時の歌仙は鬼のようだった。
「でも、みんなちゃんと分かってるって。主がここ最近ずっと遅くまで仕事してたこと」
しかも、それは溜めこんでいたわけではなく追加分なのだから仕方のないことだ。
「長谷部はきちんとした性格だから、きっとがっかりしてるよ・・・前の主をすごく尊敬してるし」
「あー黒田さんね・・・まあ、今でも大好きだよね」
でも主も頑張ってるじゃん、そう言うと彼女はすんと鼻を鳴らした。
あー可愛い。
もうめちゃくちゃに甘やかしたい。
「ねえ、なんで長谷部さんなの?堅物じゃん」
「そうだけど・・・でも、とっても優しいんだよ。笑顔も素敵だし、戦場でも頼りになるし、それに・・・か、かっこいいし」
聞くんじゃなかった。
血管がぶちぶちと張り裂ける音がする。
ていうかなんで気づかないわけ?
どう見たって相思相愛じゃん。
ま、それもむかつくから黙ってるんだけど。
慰めるだけ慰めて部屋を出る。
「な、ん、で、」
アンタなんだよ!!!
心の中で盛大に叫んだ後、いけないいけないと首を振る。
そうだ、冷静になれ俺。
その時目の前から本人がやって来た。
「加州、」
「長谷部さん。どしたの」
「今朝の、主についてなんだが」
「ああ。寝坊したこと?」
「ずいぶん根を詰められているのだと思ったんだ。光忠に聞いて、よく眠れるというハーブティーを用意したんだが」
渡してもらえないか、と言うので不思議に思って聞き返す。
「なんで?自分で行けばいいじゃん」
すると、彼の頬にさっと朱が差した。
「それは・・・、」
ほんっとに、この2人は・・・!
「いい加減さっさとくっつきなよ!」
あーあほくさ。
加州、と焦ったような声にもふり向かず、さっさとその場を後にした。


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