あなたのことを応援し隊



「主」
「・・・」
「主、ねえ」
主ってば!と清光は叫んだ。
「どぶに落ちるよ!」
ぐいっと腕を引かれて私はようやく反応する。
「はっ・・・あ、危なかった・・・!」
「どうしたの、ぼんやりしてさ」
歩きながら寝てた、と言えば彼は目を丸くする。
「うそお」
「ほんとに。ちょっと意識飛んでたみたい」
こんのすけが仕事量をセーブしてくれてはいるものの、うちが忙しければよそだって忙しい。
結局、回り回って返ってくるのがオチだった。
「いっつも頑張ってるのになぜか仕事終わんないよねえ」
慰める清光にわーん!と泣きつく。
「癒しがほしい・・・!」
「可愛い俺じゃだめ?」
「いいけど今は別のいい」
「あそ・・・あ!じゃあさ」
今夜待ってて、と彼は言った。
「今夜?なに?」
「いいこと。ちゃんと癒して応援してあげるから待っててね」

***

せっせと仕事をする私の後ろには新撰組が控えている。
「・・・で、僕たちはなにをすればいいの?」
安定の質問に清光は答えた。
「お前は主を揺り起こす係」
「は?」
は?
私が寝る前提ってこと?そうなの?
「僕のお鍋とおたまは夜食担当ってこと?」
「堀川くんはもうちょい強く起こす係」
「あーなるほど、そういう意味ね」
「夜食は和泉守。長曽祢さんは見守る係」
「俺が夜食ぅ?おむすびと雑炊くらいしか作れねえぞ?」
「いいじゃんそれで」
じゃあ清光は?と堀川くんが尋ねる。
「俺は主をいーっぱい甘やかしてあげる係」
「はあ?なにそれずるくない?」
安定が抗議の声を上げる。
「ずるいってなによ」
「お前ばっかりいいとこ取りしてさ。なんだよ揺り起こす係って、そんなの寝ないと意味ないじゃん」
心の中で同意する。
それに、寝ないように頑張っていることを忘れないでほしい。
「ねえ兼さん、お鍋ってどれくらい強く叩けばいいかな」
「つーか見守る係寝てんぞ・・・おい長曾祢さん、長曾祢さん。だめだ」
「じゃあこれ使ってみる?」
乱暴な金属音が部屋中にがんがん鳴り響く。
「おい!長曽祢さん起きてくれ!」
「はっ・・・!」
「主を見守るのが務めのあんたが寝るのはだめだろ」
「そうだな。いかんいかん」
主!と和泉守が元気よく呼ぶ。
「腹が減ったらいつでも言ってくれ!梅でもしゃけでも昆布でも、なんだって握ってやるからよ」
「疲れたらいつでも声掛けてね。肩揉んで甘やかしてあげる」
「ねえ眠い?もう眠くなった?」
「いつでも起こしてあげますからね!」
「ここでずっと見守っているからな」
「あのさ・・・もう少し静かにしてくれる?」
いいことってこれか。
嬉しいけどうるさい。


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