清光が待っていてくれる話
アルコールで火照った頬に夜風が気持ちいい。
お酒とごはんは最高だったけど、初めての懇親会は面倒だったなあと思う。
新米だからって圧かけてきやがって。
明日休みにしといてよかった。
ちゃんと起きれるかな・・・ごはんはできるだけ一緒にとるのがポリシーなんだけど、ちょっと自信がない。
「あ、」
門の前に誰か立ってる。
あちらも私に気付いたらしく、ぼんやりとした門灯を背にこちらへ顔を向けた。
清光だ。
「ただいまあ」
「もー、おっそーい。何時だと思ってんの?」
「好きで遅くなったんじゃないもん」
「はいはい、言い訳しないの。おかえり」
あーらら、真っ赤な顔しちゃって。
そう言って清光はそっと冷えた手で私の頬に触れた。
「気持ちいー・・・」
「主ってば、お酒に弱いくせにこんなになるまで飲んできたの?ちゃん管狐に送ってもらった?」
「うん、ちゃんと足元照らして送ってくれたよ。政府の刀剣男士もいたし」
「え?そなの?だったら自分とこから護衛の刀剣呼んだっていいのに」
変なの、と彼は呟く。
「誰に送ってもらった?」
「安定だったよ」
「安定ね・・・ま、送り狼の心配はなさそうかな。それにしても、こんな時間まで若い女の子帰さないのってどうなんだろうね」
「ふふ、心配してくれたてた?」
「当然でしょそんなの。ちょっと抜け出して連絡一本入れてくれたっていいのに。まいいや、無事に帰ってきたわけだし」
はあい、とまのびした声で答えたその時、遠くの方から「すみませぇーん!」という声がして思わず顔を見合わせる。
「うそ、てかこの声って安定?」
ばたばたとあわただしい音とともに姿を見せたのは、案の定さっきまで一緒にいた大和守安定だった。
「何かあったんですか?」
すみません、と言ってからすーはーすーはーと息を整えた彼は、
「実は、サインもらうの忘れちゃって・・・」
と照れたように書類とペンを差し出す。
「サイン?」
「はい。ちゃんと送り届けましたよ、っていう署名が必要なんです。あ、清光じゃん」
「どーも。おっちょこちょいの安定」
「なにさ、たまたま今回は忘れちゃっただけじゃん」
そんな会話を聞きつつ、さらさらとペンを走らせる。
「はい、お願いします」
「たしかに。ありがとうございました」
「こちらこそ、送って下さってどうもありがとう
良かったね、と清光は笑う。
「たまには息抜きも必要だし、いいんじゃない」
「なあに、ずいぶん優しいわね」
「俺は優しいの。明日も早いし、風呂入って休みな」
「あ、そのことなんだけど。ねえ、明日お休みにしちゃってもいい?」
「そうなの?俺はいいけど。ふーん・・・そっか」
なにしよっかなー、と思案顔を浮かべる。
「起きて待っててくれたの?」
「別に、そんなんじゃないけど。寝れなかっただけ」
「ほんとにー?」
あ、なんかこんなやりとり懐かしい気がする。
「清光ってお母さんみたい」
「はあ?」
露骨に嫌そうな表情を浮かんだ。
「よしてよ、俺こんなでかい娘産んだ覚えないからね」
「じゃ、過保護なお兄ちゃんだ」
「おに、・・・いーよもう、それで」
今はさ、とぽつりと響いた言葉は聞かなかったことにした。
「みんな寝てるから静かに中入ってね」
「はーい、お兄ちゃん」
そう言うと、肘で軽く小突かれた。
- 68 -
*前次#
ページ: