いつも人の気持ちなんて置いてきぼりなくせしてたまにふらっと現れては心揺さぶるようなこと言って。
降谷さんの言葉に一喜一憂したくないし、絶っ対認めたくなんてなかった。
縋り付きたくて不安でいっぱいなのは私の方なのに私の唇に噛み付いて囁いたあの時の降谷さんは私よりずっと、辛そうな表情をしていたのだ。
*
「誰が昼寝をしろと言った。起きろ馬鹿」
「あでっ、」
固い何かでおもいきり頭を叩かれ一瞬で夢から現実へ。後頭部をさすりながら顔を上げたら分厚いファイルを片手にこちらを睨む風見さんの姿。
「おはようございます」
「もうとっくに昼過ぎだ。出勤してから何時間居眠りしてるつもりだ」
「昼過ぎ?あれ、いつのまに…」
「随分と寝不足みたいだな」
「ええ、はい。まあ…」
「降谷さんから差し入れだ」
机に伏せるような体勢で寝てた為パキパキになった背中をさすりながら身体を起こす、同時にディスクに置かれたコンビニ袋の中には大量のメガシャキが。
「お前が寝不足な事まで知ってるとは、流石だなあの人は」
「…。こんなに飲んだらカフェイン中毒になりますよ絶対」
「もう寝るなよ」
かなり鋭い釘を刺されつつへいへいと適当に返事をして一本缶を開けた。
どこまで感づいてるかはわからないが風見さんには大体バレてるんだろうな。降谷さんも特別隠そうとはしてないみたいだし。……と、言っても昨晩はあの後、特別何かあったわけじゃないけど。
突然の家庭訪問の際、
待たれてなくても全部終わったら迎えにいくから。
その台詞に固まったまま動かなくなった私の頬を降谷さんは何度も突っついた。
「本当に今日は大人しいな」
「だって、降谷さんがらしくないこと言うからっ」
「確かに、らしくないのはわかってる」
安室として働いてる時の降谷さんならまだしも、ただの降谷零の姿の時にまさかそんな事を言われるなんて。
まあ待たれてなくても来ちゃう横暴なところは降谷さんらしいけども。
「…あんまり遅いと待ちくたびれてよそ見しちゃうかもしれませんよ、私」
「お前は単純だしな」
「純粋なだけです」
「大丈夫だ。もう他所にやる気なんてさらさらない」
ふん、と鼻を鳴らしてベッドから起き上がった降谷さん。
少し乱れた髪を整えると玄関の方に向かって行った。自信たっぷりな台詞の裏にほんとは何を隠してるのか。先程の辛そうに歪んだ表情が浮かんで消える。
「私が余所見する前に絶対きてください。…待ってますから」
素直になれない所は似たもの同士だからだろうか。なんとなく今は降谷さんの気持ちが見えて私もらしくない言葉が口から飛び出した。
手を伸ばせば届く距離にいるのにいつも一定の距離を保って平行線を辿ってた。
けど、今日はちょっと降谷さんに近づけた気がして、
「生意気言うなよ」
降谷さんが帰った後もなんとなく寝付けなかったのはまんまとお見通し。
最後の一口を飲み込んで空になったメガシャキの缶をゴミ箱に向けて放ったら見事、ちょうど椅子から立ち上がった風見さんにヒットした。
似た者同士K
「あ、すいません事故です事故!」
「いっぺん固めて東京湾にでも沈めてやろうか」
「それ悪役の台詞ですよ風見さん」