今日は思ったより早く仕事が終わった、しかも明日は休みだし。
『ご飯用意して待ってますね』
一言連絡を入れて、スーパーに寄ってから合鍵を使って先に裏道さん家に帰宅した。

いつもながらお風呂と着替えを借りて、サーモンシリーズでも観ながら料理しようとテレビ台に手を伸ばした時。

「え」

テレビ台の横に見るからにエッチな雑誌が何冊も積んであって。


『その雑誌の女の子がね!私とは似ても似つかない正反対なタイプだったんだよ!!』


いつぞやの詩乃さんの言葉が脳裏をチラつく。

表紙からしても見るからに胸が大きくグラマラスな…私とは正反対のタイプだった。

誰もいないのにキョロキョロ辺りを見渡して、悪いと思ったが好奇心には敵わない。

それにこんなとこに当たり前に置いとく裏道さんが悪いんだし。

1ページ目から丁寧に捲って、敗北感となんとも言えないモヤモヤした嫌な蟠りを抱えながら読み進めてたはずだったのに、

…悔しいけどこれを見て男の人がムラムラする理由、わかる。

そんな事を思ったとほぼ同時、玄関からガチャッと鍵の開く音がして光の速さで雑誌を元の場所に戻した。


「…っ、おか、おかえりなさい。早かったですね!」

「ただいま。なまえから連絡きてたから…なんか顔赤くない?」

「え!?っ普通ですよ?ちょっと暖房入れすぎたかなあ」

「………」


リモコンを手に取って決して高くないエアコンの温度を下げる私をじっと見つめてくる裏道さん。
脱いだコートをソファにかけて、伸びてきた手が額に触れた。


「熱、はないな」

「っ、」


罪悪感で胸が痛い。


「なんかあったなら素直に言ってほしいんだけど」


探るようにこちらをじっと見つめる裏道さんから逃れるように視線を逸らす。

レコーダーをつけようとして、そのまま扉が開きっぱなしになっているテレビ台。裏道さんの視線が横に置いてあるエロ本に向いた。


「見たの?アレ」

「っ見てないです!!!」

「嘘つくの下手すぎんだろ」


呆れたような眼差しにもう、穴があったら入りたいくらいの気持ちだった。


「どこまで見たの、中身」

「っ、…興味本意で、上の一冊…全部」

「やだった?俺がこーいう本持ってるの」

「っ嫌ではな……うそ。嫌…でした。

私この雑誌の人ほど胸、ないから。」


…普通に、嫉妬しました。

意地張ろうとしたけど、どうせお見通しだろうし。

どんどん語尾が小さくなる私に、フッと軽く笑みを溢した裏道さん。

私的には全然、笑い事じゃないんだけど。

絡むように腰に回ってきた腕に抱き寄せられて、問答無用にいつもみたく口を塞がれる。

このまま裏道さんのペースに飲まれるのは癪だったから固く目を瞑って口も絶対開かないようにしてたのに。
裾から忍び込んできた手が直で腰回りを撫でて、力が緩んだ隙に侵入してきた舌が口内を犯す。


「っんぅ、っちょと…っ、う…らみちさ」

「…なに?」


名残惜しそうに、唇が離れた。


「な、何じゃなくてっ…巨乳が、好きだったんですか?」

「んー」


私の質問に対し動揺するわけでもなく、裏道さんはわざとらしく何かを考えるような素振りを見せて。

直で腰を撫でていた手が、不意にツーと指先でなぞるように背筋を伝って「ひっ、」とひっくり返ったような声が出る。


「胸より感度だろ、やっぱ。そんくらい反応してくれないとつまんないし」


…つまるつまらないの問題なのか、それよりも手つきが、ずっとやらしい。


「そもそもアレ、俺のでもないしね」

「え!?」

「兎原に置く場所ないからって昔押し付けられたやつ。今度捨てようと思って?」

「なら最初からそー言ってくださいよっ!なんだったんですか今までのやり取り」

「だって珍しく拗ねてるみたいな顔してたから面白くて、つい」


悪びれない顔でごめんて、と頭を撫でる裏道さんの胸板を押し返す。

結果的にはよかった?のかもしれないけど、なんか腑に落ちない。
逃れようとしたけど腕に力を込めた裏道さんに離してはもらえなくて。


「全く中身見なかったワケじゃないけど…俺は、なまえの身体に一番興味ある」

「っなに言ってるんですか」

「拗ねるなら足りないって思わないように満たしてよ。

俺がよろこぶコトくらい、わかるでしょ?」


ご機嫌を取るためなのか、いつもより甘い声色に圧倒されて。結局裏道さんのペースになってしまう。

ずるい、と一言呟いた言葉に返事もしないまま、裏道さんは私の後頭部に手を回した。


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露草