「なまえちゃ〜ん、ちょっと相談なんだけどさあ」
「え、詩乃さんなんか今日顔色悪くないですか?」
「聞いてくれる?それがね…」
出勤して、従業員出入り口で鉢合わせした詩乃さんが今日はやけに暗い顔で。
二人仲良く休憩室に入ってから紙コップに注いだ珈琲を渡した。
「彼氏の部屋にエロ本あってさ…」
「あー…まあ、持ってますよね。ある意味健全というか」
「それはいいんだよ私だって!持ってるなら隠せって感じだけどっ!…せめてデジタルで買うとかさあ」
ダンッと机を叩く詩乃さんにコップに入った珈琲が揺れる。
ここまで荒れるってことは他にも多分、理由があるんだろうなとは思ったけど、
「その雑誌の女の子がね!私とは似ても似つかない正反対なタイプだったんだよ!!」
「それは確かに、嫌かもしれません。」
「でしょ!?わかってくれる?」
「どう説明されてもちょっと凹みますよね…もう自分だけじゃ不満なのかなとか」
「なまえちゃ[D:12316]ん」
しがみついてきた詩乃さんを受け止めると同時に休憩室の扉がガチャッと音を立てる。
話題が話題だけに一瞬、裏道さんだったらヤだなと思ったけど。
「おはざーす!二人してなに話してるんスか?」
「よくこの状況で会話に入っていけんなお前」
「ちょっと、今男子禁制なんだけど!」
なんだかまた、人数が揃ってきてしまった。
裏道さんじゃなかっただけ…マシ、ではあるんだけど。
兎熊コンビには付き合ってるの、知られちゃってるワケだし。
「なんかめっーちゃ盛り上がってませんでした?」
「じゃあついでで聞くけど、彼女とは全く違うタイプのエロ本を買う男の心理って何!?」
「えっ、なにその話題!?」
荒ぶり始めた詩乃さんからの問いかけに、まさかという顔で兎原くんがこちらを見てきたからぶんぶん首を大きく振った。
裏道さんの名誉のために。
「ねーさんまた彼氏となんかあったんスか?」
「いいから答えて」
「えぇ…ちょ、熊谷」
「俺はエロ本なんか買ったことないですね。」
「平気で嘘つくなぁお前!?…ん[D:12316]……でも本と彼女は別物だし、寧ろ彼女いるからこそ本では冒険してみようかなあ…みたいな?現実に巨乳な子ってそうそういねーし」
「クズだな」
「理不尽!だったらお前が答えてくれよぉ!」
…ほんと仲良いな。
やあやあじゃれあい始めた二人、時計を見たら結構な時間になっていて慌てて荷物を纏める。
詩乃さんもわかってはいただろうけどあまり良い解答は得られず顔が死んでいた。…今後、ご飯に誘ってみよう。
「なまえさんの彼氏はどうなんですか?」
「え、な…なにが?」
「エロ本とか、持ってるんですか?」
熊谷くんの突然の問いかけに固まる。
いつも何も知らないような、平気な顔で困った質問してくるのは多分…熊谷くんの良くない性分だ。
「っ知らないよそんなの!」
バタンと休憩室を出て扉を閉める。
ほんとにどうなのかは知らないし、もし持ってたら中身…かなり見てみたいけど!
単純に裏道さんの好み、知ってみたいから。
そしてまさかその数日後、
タイムリーにあんなことが起ころうとはその時、思ってもみなかった。
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露草