「うらみちさーん!今日猫田んとこ飲み行きません?」
「行かない、なまえくるから」
「え!!!俺も裏道さん家行ってもいいスか!?」
「良いわけねえだろ」
毎度人のカノジョに無駄に絡もうとすんな。
着ぐるみを被ったままの兎の頭を揺さぶる。
「冗談じゃないっスかあ!」と言う声は無視して揺り続けたら楽屋のドアが開いた。
「裏道さん!あ、兎原くんもいたんですね」
「えっ、もしかして邪魔?」
「もしかしなくても邪魔だよ。」
「いや、兎原くんなら大丈夫!…私も今仕事終わったから一緒にご飯食べて帰りたいなと思ったんですけど、」
「いいよ。そしたら駅で待ってて、着替えたら行く」
「っやっぱ俺邪魔じゃないっスかあ!」
羨ましい!彼女!っとその場で蹲ったピンクの物体。
無視して身支度を開始したら俺と兎原を交互に見たなまえがまさかの提案をしてきた。
「ならみんなでご飯行きません?熊谷くんも誘って」
「マジすか!なら丁度猫田んとこ行く予定だったんで、なまえさんも一緒に飲み行きましょ〜」
「立ち直り早えよ。勝手に決めんな」
「猫田?って…誰です?」
「俺の大学時代の同級生、今はバーの店長やってるんスよ」
「へー!」
「行かないぞ」
なまえに外で酒飲ませないって決めたばっかだし。
バッサリ言い切るとしょぼくれた顔で同時にこちらを見てきた二人。
弱いくせして時たまフットワーク軽いから余計に心配なんだよな…という言葉は飲み込んで。なまえに首を横に振って見せた。
「人たらしの猫田にカノジョ取られるのが心配なんスかあ?裏道さん」
「うるせえ埋めるぞ」
「調子乗ってすんません」
「バー初めてだから行ってみたいです!裏道さんが一緒でもダメなんですか?」
「なら………………仕方ないな。」
「いや甘!付き合ってんのバレた途端にめっちゃイチャつくじゃないっスか」
「声でけえちぎるぞ」
「ちぎる?」
そんなこんなで結局、熊谷も加わえ四人で店に行くことに。
かなり不本意ではあるがなまえが我儘言うのも珍しいし…まあ、たまにはいっか。
着いてから、軽い挨拶して物珍しそうに店内を見渡すなまえを「裏道さんのカノジョだよ」と早速兎原がいらんことを言ったせいで。
少し驚いた顔した後、カウンター越しにニコニコ含みのある笑みを浮かべながらこちらを見てくる猫田。
「裏道さんの…なんでしたっけ?」
「だから……彼女。」
「え?」
「絶対聞こえてんだろ」
前言撤回。やっぱ来なきゃよかった。
「だってあの裏道さんが周りにわざわざ彼女紹介するなんて意外だなあと思ったんですよ」
「あのってなんだ。別に紹介してないし、連れて飲みに来ただけだって」
「まあまあそんな照れなくても」
「猫田ぁなんか甘い酒〜」
「はぁい、裏道さんは?」
「…ビール」
やっぱ来るんじゃなかった、二度目のため息。
カウンターに横並びに座ってやけに静かだなと思い隣のなまえを見れば、逆隣に座る熊谷とメニューを広げながらずらりと並ぶ見慣れない横文字の酒に、飲めないくせして興味深々な顔してた。
「テキーラ、よく見るやつだ」という呟きに「多分なまえさん死にますよ」と熊谷の冷静なツッコミが聞こえて。
テーブルに肘をつきながら、後ろで一つに結んであるなまえの髪の先っぽをくいっと引いた。
「酒は飲んだらダメ、ノンアルにしなさい。」
「えぇ!初めてのバーなんですよ?」
「慰安旅行のこと懲りてないの、ベロベロに酔ったろあん時」
慰安旅行、と言うワードで頭に浮かぶ場面は多分…おんなじ。
一瞬だけ固まってすぐ、周りに動揺を悟られたらまずいと思ったのか「ノンアルカクテルお願いします!」と勢いよくメニューを閉じたなまえ。
不自然に伸びた背筋にほんとはいつもみたく詰め寄りたいとこだけど。
何食わぬ顔してお通しで出てきたよくわからない名前のナッツを口に入れる。
これまたニヨニヨしながら猫田がビールを差し出してきた。
「結構過保護なんですねえ裏道さんって。でも好きなタイプは一緒かも、なまえさんちょっと元嫁に似てるし」
あ、一人目のですよ?
奥歯でガリっと砕けたナッツ。
今日やっぱ、来るんじゃなかった。
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露草