六 忠誠の万華鏡
錆兎の死から数ヶ月が過ぎた。何度か季節が変わって、寒い雪の日。
●は錆兎を忘れることが出来ず、今日も1人狭霧山に訪れた。
錆兎が切った岩に額をつけて、はらはらと涙を流す。肩に雪が降り積もろうと、●は帰ろうとしない。
「錆兎…………」
『錆兎、あの子…今日も来てるよ』
『…………』
『姿を、見せてあげないの?』
『姿を見せれば、●は俺を忘れられない』
『…………』
『あの震える肩を抱くのは、もう俺の役目ではない』
狐の面を付けた錆兎は、木の上から愛しい●の姿を見つめた。自分を想って泣く●へ伸ばしたい腕を強く握り、必死に押さえ込んでいた。
『住む世界が違う俺は、どんなに想っていても……もう●に触れられない。忘れるべきなんだ』
錆兎の肩が小刻みに震える。
『…俺が、もっと強ければ……そう思わない日はない』
『錆兎…』
日が暮れる頃、ザッザッ…と雪を踏み抜く音がした。
大岩にすがって泣く●の肩に、隊服を着た義勇がそっと触れた。
●は驚いて振り返る。
「義勇……」
「ここは冷える。帰るぞ」
義勇は●の頭や肩に積もる雪を手で払い除け、自身の着ていた羽織を頭から掛けた。
「…………」
●は泣き止む事なく、義勇に手を引かれるまま歩き出した。
『……………』
『俺の役目は……終わったんだ』
錆兎は自分に言い聞かせるように、そう呟いた。
***
2021.11.03確認。
錆兎と真菰。
2019.12.18
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