素直じゃない、私も君も。

真月零くん。
私のクラスの転校生で
「よかれと思って!」が口癖の
おせっかい焼きで笑顔の可愛い優しい男の子。








・・・・・・私以外には。
いや、語弊がある、真月零くんは優しい。
真月零くん、は。



「なぁーにさっきから変な顔してるんですかァ〜?名前ちゃんはよォ?」
「うわ、ベクター。真月くんの顔で、それやめて。気持ち悪い。」


出た。噂をすればベクターだ。
タイミングがよすぎる。ベクターってたまに私の考えてることが分かってるのかってくらい現れるタイミングがよすぎてちょっと怖い。しかも大抵内心でベクターについて毒づいている時。



「名前ちゃんは俺より真月の方がいいって言うのかよォ」
「ねえ、ほんとに気持ち悪いからやめて」
「キャハハハハ」


この、人の顔を見ながら嫌な笑い方をするベクターが真月零くんだなんて思いたくない。普段はよく空回るけどあんなに可愛くて癒しの存在なのに。
まあ普段の姿って本当はこっちの人をおちょくるのがだーいすきなベクターなんだけど。



「ベクターってさあ」
「あァん?」
「え、急に柄悪」



ベクターって本当に何考えてるのかわからない。ニヤニヤしてるかと思えば急に怒りだしたり、その逆もあったりして。
真月くんの時は表情ですぐ分かるからベクターのこういう所はちょっと掴めない。



「なんだよ」
「んー、普段から真月くんの時みたいに愛想よくしてればいいのになって」
「やだね、めんどくせェ」


即答だ。
そして、うぇー と効果音がつくような勢いでベロをだしてる。
今日のベクターはいつもより表情がコロコロ変わる。そんな所はちょっと真月くんみたい、だなんて。

そんなわけないじゃん、だってあのベクターだよ?可愛さの欠けらも無いあのベクターが真月くんと似てるなんてありえない。
・・・まあ一応同一人物ではあるんだけどさ。


「だからミザエルとかドルベから嫌われちゃうんだよ」
「え〜名前さん、なんでそんな酷いこと言うんですか?僕、悲しいです・・・・・・」
「だからベクターの時に真月くんになるのやめて」

ハァ と大きくため息をつく。
ベクターは人の嫌がる顔が大好きだから、できるだけ挑発に乗らないように気をつけてるのに中々上手くいかない。


「真月くんはあんなに可愛いのにベクターってぜーんぜん可愛くない」
「・・・・・・・お前も俺より真月の方がいいって言うのかよ」
「え?」
「別に。なんでもねェよ」



何その表情。
今までだって何回もこんな言い合いしてたのに。そんな、拗ねました みたいな顔。
・・・・・ベクターに不覚にもキュンとするなんて。


「ねえベクター、私真月くんのこと好きだけどベクターのことも、もしかしたら結構好きかもしれない!」
「ハァ?結構ってなんだよ、バァーカ。
つーか俺は別にお前のことなんか・・・」
「なんか?」
「チッ、なんでもねェーよ」

それだけ言い残すとベクターはもう見えない所まで走り去ってしまった。




拗ねた顔とか、好きじゃないって口に出さないところとか、本当は表情がコロコロ変わるところとか今日はベクターの知らない一面がいっぱい見れちゃった。



あれ、もしかしてベクターって本当は真月くんよりも可愛いかも、なんて。



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